いま読んでいただいている work.naenote.net とは別に、もう1つサイトを持っています。中間管理職向けの適正努力ラボです。
そこの記事はぼくが書いていません。ぼくが設計したAIエージェント11体が書いています。ネタ探しから執筆、事実確認、審査、SEO調整、SNSへの投稿まで、ぼくは1文字も触っていません。
そして、その記事をいま自分で毎日読んでいます。
4ヶ月やってみて一番驚いたのは、成果物の出来ではありませんでした。自分がその成果物の読者になっていたことです。
ただし、渡さなかった仕事が1つだけあります。そこを間違えると、たぶん全部壊れます。
なぜAIエージェントの組織を作ったか#
記事を増やしたかったからではありません。AIエージェントが自律運営する組織を作ってみたかったからです。
サイトはその題材でした。
構想は2025年の夏、具体化は2026年2月#
最初に考えたのは2025年の夏です。gemini-cli が出たときに構想して、原型まで作りました。
形になったのは2026年2月ごろ。Claudeを本格的に使うようになって、一気に具体化しました。
興味が半分、仕事への当て込みが半分#
動機の半分は純粋な興味関心です。人手を介さずにAIエージェントだけで組織が回るのか、自分の手で確かめたかった。
もう半分は仕事です。手を動かして作れば知見が残ります。その知見は本業でも役に立つはずだと考えました。
題材に選んだのは2つ目のサイト#
組織を試す場として選んだのは、主題を1つに絞ったサイトでした。ネタ選びから配信まで、エージェントが回しています。
母艦は主題が広い、ラボは1点#
ラボが扱うのは中間管理職の「適正努力」だけです。母艦のほうは173本あり、主題は仕事効率化、コミュニケーション、キャリアと広い。
このブログを一度止めて再開した経緯はこちらの記事に書いた。
守備範囲が違えば、書くものも判断の基準も変わります。
11体のエージェントと22本のワークフロー#
いまの編成はエージェント11体です。記事を出すまでに6体、出したあとの分析と返信に4体が動いています。
出すまでの6体は、ネタ選び、起草、事実の裏取り、審査、SEO調整、SNS投稿への翻訳。ここが止まると記事は出ません。
出したあとの4体は、検索流入の分析、SNS反応の分析、Xの返信、Threadsの返信。
その上に自動化ワークフローが22本あります。定時の公開、SNSへの投稿、実測データの取得、週次の点検。
配管の作り方はこちらの記事に書いたので、ここでは繰り返しません。
AIエージェント組織の運用で、最初にやらかしたこと#
最初の失敗は成果物の品質ではありません。組織全体の整合性を崩したことでした。
構成の骨子は作ってありました。エージェントを機能で分け、どこで何を判断するかも決めていた。それでも崩れます。
局所的な要求を、その場で個別実装させた#
細かい要望が出るたびに、その場でAIに実装させました。一つひとつは正しく動きます。
ただ、積み上げた結果として全体の整合性が取りづらくなりました。
足りなかったのは機能ではなく運用の方針#
原因ははっきりしています。組織の構成骨子は作っていたのに、運用における設計ポリシーを決めないまま進めたことです。
先に決めるべきだったのは機能ではなかった。なめてました。
本業でも同じだと思っています。役割分担だけ決めて運用の方針を決めなければ、担当ごとに判断が割れていきます。
何を明文化したら任せられたか#
明文化したのは4つです。ここを言葉にして工程まで設計したら、自分がやったのと同等の成果物が出るようになりました。
明文化した4つ#
言葉にしたのは、頭の中にあって外に出していなかったものです。
- コアとなる考え方 どういう筋で物事を捉えるか
- 価値観 何を良しとし、何を書かないか
- 目指す目標 誰をどこへ連れて行くか
- 自分のクセ 語尾、段落の切り方、たとえの選び方
そのあとに設計した3工程#
基準を書いただけでは動きません。インプット収集、処理プロセス、アウトプットの方法と形式まで設計して、はじめて回ります。
設計したのは3工程です。何を材料に集めるか、どの順で処理するか、どの形式で出すか。
ここまで設計すると、本当に自分が書いたのと同等の記事ができあがります。
4ヶ月後、自分がその読者になっていた#
数字よりも効いたのは、自分がその読者になっていたことでした。2026年5月13日に最初の記事を出して、116日で207本。下書きが3本残っています。
書いた内容は知らないのに、書き方だけは知っている。この組み合わせが妙に快適でした。
それでも渡さなかった一線#
渡していない仕事が1つあります。価値観そのものです。
執筆は渡しました。文体も、構成も、ネタの拾い方も渡した。渡さなかったのは、何を良しとするかの判断だけです。
価値観は伝える、解釈は任せる#
分担は3層にしました。価値観だけを手元に残しています。
- 価値観そのもの — ぼくが伝える。渡さない
- 価値観の解釈と、オペレーションへの落とし込み — 編集長エージェントが行う
- 執筆 — ライターエージェントが行う
肝は2でした。価値観を「書かないことリスト」や判定手順に変換する作業には、かなりの量の判断が含まれます。そこは任せられます。
拒否権が実際に働いている#
編集長には拒否権を持たせてあります。合格を出さない限り、記事は公開されません。
自分が作った編集長が記事をボツにしていることはよくあります。別の人格を持つライターが書いたもので価値観に触れたものは、必ず落ちている。
ちゃんと仕事してるじゃないか、と思いました。
同じ主題をラボ側でも扱っています(AIに176本書かせて分かった、中間管理職が渡すべきは執筆ではなく拒否権)。
「ぼくの文章じゃない」と感じた日#
違和感が出たことは何度かあります。そのたびに直したのは成果物ではなく、運営ルールと執筆ガイドのほうです。
読んでいて、これはぼくの文章じゃないと感じる瞬間がある。文体は合っているのに、判断が違う。
成果物を直すと1本しか直りません。基準を直すと、次の全部が直ります。
今どうなっているか#
正直に言うと、あまりアクセスが集まっていません。自己満足なのだなあと感じて、止めようかとも思います。
ただ、サイト運営は息が長い取り組みです。4ヶ月で判断するには早すぎる。だから1年は続けようと思っています。
ラボには記事のほかに、読者が自分の消耗度を測れる燃料残量チェックも置いてあります。中間管理職向けの7問です。
続けるかどうかを決めるのは数字でしょう。ただ、4ヶ月で手元に残ったのは数字ではありませんでした。人に仕事を渡すとき、何を手放して何を握るのかという設計のほうです。
まとめ:仕事は渡せる。価値観は渡せない#
4ヶ月やって残った結論は1つです。仕事は渡せる。価値観は渡せない。
渡せるものは思ったより多くありました。文体も、構成も、ネタの選び方も、価値観を判定手順へ翻訳する作業も渡せます。そのために要ったのは、頭の中にある考え方・価値観・目標・自分のクセを言葉にすることだけでした。
渡せないのは、何を良しとするかを決める仕事です。決める人間がいなくなれば、組織は基準そのものを失います。
AI社員に人格は要らないと以前書きました(詳しくはこちらの記事に書いた)。4ヶ月動かして、その続きが見えました。
要らないのは人格で、渡してはいけないのは価値観です。


