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問いを設計するだけ。AIで1億円の投資案件を5分で70%まで仕上げた話

目次

社内で1億円規模の投資を取りに行くミッションを任されて、ビジネスケースとROIと動くモックを揃える必要がありました。普通なら何日もかかる作業です。

ところが、頭の中のイメージを5分間ざっと音声入力でしゃべって投げたら、ほぼ一発で7割が揃いました。

種明かしをすると、効いたのはAIの性能ではなく「AIに何を聞くか」の設計のほうです。そして、その設計を支えていたのは、5分の手前にあった数週間の蓄積にほかなりません。

5分の音声入力で、1億円の投資案件がほぼ動き出した
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任されたのは、社内投資レビューに通すための一式を揃える仕事です。具体的に何を作るのか、工数のボリューム感はどれくらいか、ROIはどう出るのか、定性的なベネフィットも含めて、投資判断者を動かせるだけの材料を組み上げる必要がありました。

投資を取りに行く以上、絵に描いた餅では話になりません。価値が手触りで伝わる「動くモック」まで持っていくことが、最初から要件に入っていました。

ここでぼくが最初にやったのは、プロンプトのテンプレートを探すことではありません。AIに投げる前に、問いをどう設計するかを先に考えることです。

ツールは、Claude Code の Opus 4.8 が出た直後のタイミングを使っています。Ultra と Dynamic Workflow が使える状態で、コンテキスト整理から価値設計、具体的なモックやデモまで一気通貫で落とし込める手応えがありました。

実際の流れは拍子抜けするほど短いものです。頭の中のイメージを5分ほど音声入力でざっと吐き出し、Opus 4.8 に投げて、あとは出てきた結果をレビューするだけで進みました。ROIの算出式の出し方だけ分かりにくかったので、Excel1枚の試算表にまとめさせるプロンプトを1回だけ追加しました。それ以外は、5分の音声入力で全部進みました。

結果として、社内投資レビュー会議の事前レビューでは特に問題なしと言われ、そのままメインの投資審査の場に進むことになりました。正直、ここまでスムーズに通るとは想定していませんでした、というのが本音です。

その「5分」の前に何があったか
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5分でできた、と書くと魔法のように聞こえますが、それは違います。「5分」はゴールではなく、その手前の蓄積が積み上がったスタート地点にすぎません。

数週間、他の仕事の合間で寝かせていた
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この案件のことは、いきなり5分で考えたわけではありません。数週間にわたって、他の仕事の合間に少しずつ考えていました。

風呂場でぼんやり考え、移動中に断片を組み立て、余白の時間に「この投資は誰のどんな仕事を変えるのか」を反芻していました。意識して机に向かったわけではなく、頭の片隅で勝手に熟成が進んでいた感覚に近いです。

この数週間がなければ、5分の音声入力は空っぽの5分にしかならなかったはずです。

思考を棚卸しした30分
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音声入力の直前には、思考を整理する時間を別に取りました。だいたい30分です。

そこでやったのは、作ろうとしている機能の特質、それが効く前提条件、自分が持っている背景知識を一度ぜんぶ棚に並べることです。機能の特質については自分の専門領域に重なる部分が多く、風呂場で転がしてきた思考も含めて、背景知識の蓄積はかなりの量がありました。

棚卸しをすると、何を語れば相手が動くのか、どこが弱点なのかが見えてきます。この30分が、5分の音声入力の解像度を決めていました。

参考 議事録を会議前に書き終える?元MENSAの敏腕コンサルに学ぶ会議の極意

蓄積があったから、言語化が速かった
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整理すると、こうなります。数週間の熟成と30分の棚卸しがあったから、最後の5分でよどみなく言語化できたのです。

逆にいえば、蓄積ゼロの状態でいくら洗練されたプロンプトの型を使っても、5分では何も出てきません。AIに渡せる中身が頭の中になければ、問いの設計自体が成り立たないからです。

問いに乗せた情報と、出てきたもの
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5分の音声入力に、ぼくが何を詰め込んだのか。出力の質を最終的に決めたのは、ここに乗せた情報の中身のほうです。

音声入力で整理したのは、おおむね次の要素です。

  • 前提事項 いまの仕事のやり方と、その中にある非効率
  • 効率化後のイメージ 仕組みが入ったあと、仕事がどう変わるか
  • プロダクトの動き その状態でプロダクトがどこにどう貢献するか
  • 適用組織 社内のどの組織に効き、どんな効果が出るか
  • 効果試算の要素 効果を見積もるための前提と変数

これを1回投げただけで、ビジネスケース、ROI、動くモックがほぼ揃いました。テキストの箇条書きではなく、投資審査に持っていける硬さのアウトプットが、流れるように出てきたのです。

ただし、全部が一撃だったわけではありません。試算は「100件あたりの効果はこれくらい」という単位レベルで止まりました。そこから最終的な投資額への拡大推計、つまり全体規模への引き伸ばしは人間がやる必要がありました。

ここは大事なところで、AIが出せたのは「単位あたりの構造」までで、その構造を現実の組織規模に当てはめて1億円というラインに着地させる判断は、自分の手で詰めました。

AIで仕事が進まないとき、問題はどこにあるか
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「AIを使っても一般論しか返ってこない」という声をよく聞きます。ぼくも以前は同じ感覚を持っていました。でも今回の体験で、その正体がはっきりしました。

「一般論しか返ってこない」の正体
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一般論しか返ってこないのは、一般論しか聞いていないからです。

自分のコンテキストが乗っていない問いを投げれば、ネットで調べれば出てくる程度の答えが返ってくるのは当たり前です。AIが浅いのではなく、こちらの問いが浅いだけです。AIは鏡で、そこに映るのは自分が持ち込んだ情報の質そのものだと痛感しました。

だから「AIに何をインプットすればいいか分からない」という悩みは、実はAIの使い方の問題ではありません。自分のドメイン知識やコンテキストを、まだ言語化できていないという問題です。順番でいえば、プロンプトの型を覚えるより先に、頭の中のイメージを言葉にできるかどうかが効きます。

参考 仕事のスピードは「はまる」時間の長さで決まる

「動くモック」を持っていく、という話
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今回いちばん腹落ちしたのは、「動くモック」を持っていくことの重さのほうです。

DeNA の南場社長が、動くモックを持ってこない人は新規ビジネスのレビューの場に来させない、という趣旨の話をしていたのを思い出しました。ぼくはコンサルティング企業に勤めているので、新規ビジネスを生業とする会社より少し感覚が遅れているかもしれません。それでも今回、動くモックがあるだけで投資審査の通りやすさがまるで違うことを、身をもって「こういうことか」と実感しました。

価値は語るより見せたほうが速い。そして、その動くモックを5分の問いから引き出せたのも、頭の中に完成形のイメージが先にあったからにほかなりません。

AIが出せなかった30%の正体
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70%まではAIで届いた。では、残りの30%はどこにあったのか。

レビューで返ってきた「数字に余裕を持たせた方がいい」
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メインの投資審査に進んだあと、フィードバックが返ってきました。「数字に余裕を持たせた方がいい」というものです。

最初は意味がよく飲み込めず、面食らいました。試算は誠実に積み上げたつもりだったからです。よくよく聞くと、投資判断者の側に残予算を使いきりたいという事情があり、むしろ数字を大きく見せたほうが都合がよかったのです。

「そんなことあるんだ」と素直に驚きました。精度を上げる方向の努力をしていたのに、求められていたのは別の方向だったわけです。

組織の内部論理は、ドメイン知識でも言語化できない
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ここにこそ30%の正体があります。残予算を使いきりたいという投資判断者の意図は、ぼくのドメイン知識にも、AIに乗せた情報にも、どこにも入り込む余地がありません。

そもそも自分が知らなかったのだから、言語化のしようがありません。組織の内部論理や、その場にいる人の本当の動機は、外からはどうやっても見通せないものです。問いの設計でカバーできるのは、自分が知っていることの範囲までだったのです。

AIは鏡。映るのは自分が知っていることの範囲
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整理すると、AIで届く70%は「自分が持ち込んだ情報の質」で決まり、届かない30%は「自分が知らないことの範囲」に張り付いていました。

鏡は、目の前にあるものしか映しません。自分の視界の外にある組織の力学までは、どんなに問いを磨いても映り込まないのです。逆にいえば、その30%を取りにいくのは、AIの仕事ではなく、人と話して現場の論理を拾う人間の仕事だということです。

まとめ:問いの設計が9割、その問いを支えるのは蓄積
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今回の体験から持ち帰ったのは、ひとつのシンプルな実感です。

AIで難しい仕事を5分で70%まで進められたのは、問いの設計が正しかったからにほかなりません。そして問いの設計が正しくできたのは、その手前に数週間の熟成と30分の棚卸しという蓄積があったからこそです。

逆にいえば、蓄積のない状態で型だけ真似しても、5分はただの空白に終わります。AIが返してくる一般論にうんざりしているなら、磨くべきはプロンプトの言い回しではなく、頭の中のイメージを言葉にできる解像度のほうです。

残りの30%——組織の内部論理や、その場の人の本当の動機——は、鏡には映りません。そこは今も、人間が足で取りにいく領域として残っています。

AIに何を聞くかを設計できる人だけが、AIに7割を肩代わりさせて、残りの3割に自分の時間を使える。ぼくはこの案件で、それを身体で覚えました。

NAE
著者
NAE
IT戦略が専門の外資コンサル。「こうしたほうが早くない?」が口癖の効率化マニア。目指す人物像は三国志の左慈仙人。詳しいプロフィールはこちら

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