クライアントやチームメンバーの目にも入る食事のマナーは、ビジネスパーソンとして身につけておきたいもの。
にもかかわらず、外で食事をすると茶碗の持ち方が変な人をちょくちょく見かけます。
彼ら・彼女らはなぜそのような持ち方をするのでしょうか。
マナーが悪いとか見ていてゲンナリするとか、そういった感情面は一旦置いておき、今回は実用面のみからメリット・デメリットを考えてみようと思います。
正しい茶碗の持ち方
まずは正しい茶碗の持ち方です。
- 人差し指〜小指をで茶碗の高台を下から支える
- 親指を茶碗のふちにかける
詳細は、参考文献とともにこちらのサイトで解説されています。
メリット:取り回しが楽
この持ち方のメリットは、なんといっても茶碗の取り回しがとても楽ということでしょう。
- 受け取りが楽
- 「ください」の手のままで済む
- 持っていて楽
- 肩に力が入らない
- 強く握らなくても持てる
- 口に運ぶときに楽
- 親指が顔と干渉しにくい
- 不自然がない
また、茶碗と手の接点が高台(下の上げ底部分)とふちなので、中身が熱くても茶碗を持てることもメリットでしょう。
デメリット:持ち上げる・置く所作が面倒
唯一のデメリットは、茶碗を持ち上げる・置く所作が若干面倒という点です。
茶碗の下にある高台を指4本で支える形なので、持ち上げるときはテーブルと茶碗のあいだに指を滑り込ませなければならず、置くときも指を引き抜く必要があります。
もちろん慣れれば片手でシームレスできるようになるのですが、その技術を身につける手間が面倒という点はデメリットにもなりえます。
変な茶碗の持ち方トップ3。実用面のメリットとデメリット
よく見かける変な茶碗の持ち方はこちらの3つです。(自分調べ)
- コップのように横持ちする
- 横持ち+人差し指を伸ばす
- 横持ち+ふちに人差し指をひっかける
それぞれ実例とともに、メリットデメリットを考えていきます。
コップのように横持ちする
お茶碗をまるでコップのように横持ちする持ち方。
ご飯茶碗たけでなく、味噌汁や小鉢など、小柄で深さのある皿をこの方法で持つ人が多い印象です。
メリット:持ち上げやすい
メリットといえば、正しい持ち方のデメリットの裏返し、持ち上げる時にわざわざ下に指を滑り込ませる不便がない点でしょう。
茶碗の大きさが手の大きさや指の長さにマッチしているのであれば、横持ちでもすべることなく十分に持ち上げることができます。
また落ちているものをつかむ所作と似ているため、身体の動きとしては自然な部類かと思います。
コップや湯飲みなど、様々な食器に応用ができる点も便利なポイントではあります。
デメリット:中身が熱いと厳しい
この方法のデメリットは、中身が熱いと持ちにくいし疲れるに尽きると思います。
茶碗の側面を持つので、中身の熱がダイレクトに指に届きます。熱いものを持つには向きません。
それを避けるため、茶碗のふちの近くをコップ持ちする人もみかけます。
実際にやってみるとわかるんですが、茶碗が安定しないんですよね。安定させるにはかなり強い力で茶碗を掴まないといけません。
結局この方法で茶碗を持つと指と手が疲れてしまうのではないでしょうか。
コップ持ちで人差し指を伸ばす
コップ持ちの進化版(?)です。
横持ちするのは同じなのですが、人差し指は茶碗に触れさせずリリースします。
メリット:人差し指が楽
コップ持ちと比べ、人差し指が楽になります。
そもそも人が何かを握るとき、主に力が入るのは小指〜中指の3本です。人差し指が握力に寄与する割合はあまり大きくありません。
たとえば、剣道の稽古で左手の小指と薬指だけで竹刀を握って素振りをする練習があるのですが、これで普通に竹刀が振れてしまうんです。
茶碗は半径が大きいため、小指薬指だけでなく、最も長い指である中指も主力になります。
となると、実は人差し指の出番はあまりないんです。ならばリリースして楽にする方が疲れないですよね。人差し指は。
デメリット:中身が熱いと厳しい
デメリットはコップ持ちと全く同じ。
中身が熱いと側面を持ちづらく、結局疲れてしまいます。
茶碗のふちに人差し指をひっかける
コップ持ち+人差し指リリースをさらに進化させたのがこちら。
遊んでしまっている人差し指を有効活用すべく、茶碗のふちにひっかけます。
主に親指、中指、人差し指の3点で茶碗をホールドする形になるため、薬指と小指はあまり使いません。
メリット:コップ持ちに比べると安定する
コップ持ちのメリットである持ち上げやすさに加え、3点ホールドになったことで茶碗を持っているときの安定性が増すことが最大のメリットです。
コップ持ちでは茶碗の外から内へ「握る」力を利用していましたが、人差し指を「ひっかける」ことで茶碗の内から外への力も利用することができます。
デメリット:指が疲れる、顔と干渉する
とはいえ、この持ち方は親指、中指、人差し指の3点に重さが集中します。そのぶん、指が疲れやすくなるのがデメリットです。
特に中指は指の側面に重みがかかる形になるため、ずっとこの持ち方をしていると中指が変にひん曲がってしまうリスクもあります。
一方、人差し指が茶碗の上側までせり出すので、茶碗を口に運ぶ際に人差し指が顔に当たって邪魔になる場合がある点もデメリットでしょう。
茶碗の正しい持ち方には実用的な理由がある
以上まとめると、実用面のみで言えば
- 正しい持ち方:中身に依存せず、持っていて楽だが、持ち上げる・置く所作が少し面倒
- 変な持ち方:持ち上げる・置く所作が楽だが、中身が熱い場合は使えず、手指も疲れやすい
ということになります。
こうして見てみると、正しい持ち方のデメリットはテクニックでカバー可能なものばかり。使い方を身につければなんとでもなります。
一方で、変な持ち方のデメリットはテクニックではどうにもならないもの多いことがわかります。中身が熱いと持ち方を変える必要がありますし、疲れやすいのはどうしようもありません。
ならば、最初から正しい持ち方+デメリットをカバーするテクニックをさっさと身につけるほうが、はるかに楽だということでしょう。
茶碗の持ち方が変だと印象が悪くなる
ここまで実用面だけにフォーカスしてきました。
さらに人に与える印象も加味すると、変な持ち方をし続ける意味はもはや存在しないのではないでしょうか。
- 見た瞬間「うわ・・・」と思われる
- 育ちが悪い、親の教育がなってないと思われる
- 生理的に無理(クチャラーと同列)
変な持ち方をしている人は、それだけでマイナスイメージが先行してしまいます。
それを補ってあまりある魅力があればいいじゃん、という話ではありません。
食事のマナーという点でのマイナスイメージは感情的・生理的な側面が強いので、プラマイがプラスになればOKという理論は当てはまりにくいんです。
初対面の人との人間関係がいつもマイナスからのスタートとなってしまう事態に陥る前に、正しいお茶碗の持ち方を身につけてみてはいかがでしょうか。
まとめ:マナーは「実用面のなぜ」とセットで覚える
というわけで、実用面だけにフォーカスしても、正しい茶碗の持ち方は正しかったというお話でした。
ともすると「守ること」が目的化してしまいがちなマナーの世界。
好き嫌いせず、実用面での「なぜ」をきちんと考えてみると、マナーがなぜマナーとなったかが理解できるのではないでしょうか。
コメント
マナーの勉強をしていて
このような記事はとても助かります
器の底が汚れている場合
正しい持ち方をしてしまうと
手が汚れてしまいませんか?
名無しさん
コメントありがとうございます。
そこが汚れている場合の作法をきちんと学んだわけではありませんが、
・布巾を置く
・茶碗を布巾の上に置き、高台を浄める
・茶碗を汚れていない場所に移す
・布巾で卓上の汚れている部分を清める
がよいのかなと思います。
(茶道の師範を持っている母がこのようにしていたので)
私は最後のスタイルの持ち方ですが、猫手なもので他のどれをやっても熱くて持てないゆえこうなりました。
マナー違反なのは知っていますが、すぐにやけどをするのでお許しください。車のボンネットに手が触れただけで痕が残るレベルのやけどになります。