生来の理屈っぽい性格やコンサルタントという職業。
ぼくの考え方や語り口はロジカルシンキングに偏っています。
しかし、ロジック一本では人を動かすことは難しい。
それで非常に苦労した若手時代、ぼくに足りていなかったのはストーリーを語る力でした。
人に動いてもらうには理屈だけでは足りない#
コンサルタントという仕事の本質は、クライアント企業の変革を支援することです。
企業が変わるには人に動いてもらわなければなりません。
そんな背景を無視し、「理屈が通れば人は動く」と勘違いしていたぼくの失敗談をお話します。
議論の余地のないロジックを求められてきた#
ジュニアコンサルタント時代のことです。
当時の仕事ほとんどが、上司が使う会議資料の作成や補助的なデータの整理でした。
求められるのは、もれなくダブりなく(MECE)論理的欠如のない資料作り。
ロジカルシンキングこそ正義。ロジックツリーは戦友。フレームワークとは大の仲良し。
**「議論の余地のない資料を作ってね」**が合言葉でした。
議論の余地のない=事実に基づき分析するとコレしか選択肢がありえない、というレベルで意思決定ができる資料のこと
筋が通り、理論・ロジックが完全である資料を作れば、上司が意図した通りの意思決定をひっさげて会議から帰ってくる。
「お前の資料、役立ったよ。ありがとう」
こうしてぼくは、ロジックが完全なら人は動く、と勘違いしてしまったんです。
理屈だけでは不十分だった#
時は経ち、自分がプロジェクトをリードし人を動かす立場になったときのこと。
ロジックは完全で抜け漏れはない。
どう解釈してもこの意見が正しく、そこに議論の余地はない。
最後まで考えきった資料をもって、気難しいと有名なクライアントとの会議に臨んだときのことでした。
彼にいの一番に言われたのが
「なぜこれがいいのか全くわからない」
でした。
こういう反発、ぼく大好物なんです。
自分の頭のなかには完璧なロジックがある。
手元にはそれを裏付けるデータがそろっている。
反発されてもそれを覆すだけの根拠をもっている。
マウントポジション開始です。
しかし、その時ばかりは何をどう説明してもうまくいきませんでした。
当人は「わからない」をくり返す。こちらは「XXXだからです」と説明を続ける。
ホワイトボードを使った議論まで発展し、会議時間を使いきったあげく、結論は出ずに次回に持ち越し。
この時点でプロジェクトは3日のビハインドとなることが決定してしまいました。
ロジックは完璧、データも揃って抜け漏れはない。
なにがいけなかったのでしょうか。
人を動かすのは論理ではなく感情。必要なのはストーリー#
会議の後、散々だったという結果を当時の上司であったシニアコンサルタントへ報告したときのこと。
彼からのフィードバックはこうでした。
「お前、言っていることは正しいけど、ストーリーが足りない」
人は理屈で納得し、感情で行動する#
ストーリー・・・
論理的に正しいことは正しい。正しいと伝われば人は動く。
そう信じていたぼくには、ストーリーという非論理的なシロモノは全く目に入っていませんでした。
見かねたシニアコンサルタントがさらに一言。
「ロジックだけじゃ人の背中は押せないな」
これでピンときました。
ロジックは納得感を生み出します。しかし頭と心は別物。
感情を突き動かさないと、人は動かない。ロジックだけでは力不足。
そして人の心を動かすのは、ストーリーであると。
ロジックの完全性はそのままにストーリーを語った結果#
その気難しいクライアント担当者との次の会議。
ぼくはただ彼に正対し、彼の目を見て、語りかけるように話をしました。
今の状況、具体的に起こっていることやその実害、現場の声。
やるべきこと、方針の案3つと比較サマリ。
別クライアントでの経験に基づく推奨案とその具体的な理由。
クライアント企業の風土を考えたときの成功のポイント・・・
気をつけたのは、地に足ついた生々しい話をすること。
ハイレベルな理想論だけではなく、しみじみと語ること。
彼は資料には目もくれず、ただぼくを見て話を聞いていました。
そして、最後に一言。
「わかった。案2でいきましょう」
心を揺さぶるストーリーの6つの型#
ストーリーのチカラはすごい。
とはいえ、なんでもストーリーに仕立てて語ればいいわけでありません。
下手くそで白けるストーリーは逆効果。
では「成功する」上手なストーリーに型はあるのでしょうか。
lifehacker.jpのこちらの記事によると、「成功する物語」には6つの型があるそうです。
- 「貧乏人から金持ちになる」(着実に成功を重ねていく)
- 「悲劇」、つまり「金持ちから貧乏人になる」(少しずつ着実に転落していく)
- 「苦労話」(転落してから這い上がる)
- 「イカロス」(成功してから転落する)
- 「シンデレラ」(成功してから転落、そしてふたたび成功する)
- 「オイディプス」(転落してから成功をおさめ、ふたたび転落する)
研究の結果、感情体験を人気に結びつけるうえで何よりも効果的なのは、「復活」を盛り込んだ感情的ストーリー展開であることがわかりました。従って、物語には少なくとも「転落と成功」を盛り込むのがよいとのことです。
(出典:「成功する物語」のパターン:1700を超えるプロットを分析した結果 | ライフハッカー[日本版])
ここで「成功する物語」とは、「人の共感を呼べる物語」だと読み取りました。
受け取る側の心にストンと落ち、感情を揺さぶることが「成功」ということです。
心を動かし、行動を起こさせることがストーリーテリングのゴールである。
そのためには、成功と転落の両方を盛り込むことが大事だと。
心を揺さぶるストーリーを支えるもの#
とはいえ、ストーリーひとつで人を動かすのは無理です。
論理性と信頼、次の2つの土台が揃っていないと、そもそもストーリーが正しいのか信じられないからです。
- 論理性 :話のスジが通っていること
- 信頼 :話者が信用に足ると思われること
ストーリーは最終的な表現手段。
まず、話の論理展開や当人からの信頼を確たるものにすること。
ストーリーを練るのはその後です。
まとめ:説明するな、ストーリーを語れ#
というわけで、人を動かすにはストーリーが大事だよ、というお話でした。
理屈だけに頼ることなく、伝え方や語り方にもぜひ目を向けてみてください。
ロジックやその裏づけはもちろん重要なのですが、理屈をそのまま説明するだけでは人を動かすことは難しい。
- 何をどのような順番で伝えるか
- アップダウンやクライマックスは
- 準備した情報の中で何を出すか
ストーリーテリングは、人を動かすためにきわめて重要な技術です。
ぼくもまだまだ初学者。ぜひ一緒に学んでみませんか。



