新入社員が必ず通る最初の難関。それが会議の議事録作成です。
ぼくはこれが大の苦手でした。初めてプロジェクトの現場で議事録を書いたとき、たった1時間の会議なのに議事録を書き終わるまで5時間もかかりました。しかもレビュー前の初版です。
目も当てられません。ぼくはダメ人間だなあ・・・と落胆したものです。
そんなとき、隣にチームの超デキる先輩がぼくにこう言い放ちました。
おまえさ、議事録なんて会議前に書き終えとくもんだろ?
・・・え?
議事録作成に5時間・・・その理由
新入社員研修を終えた翌日、ぼくはプロジェクトの現場に合流しました。
上司から受け取った過去資料を読みあさりながら、クライアントの状況、プロジェクトの目的、これまで検討状況などをインプットし、キャッチアップに努めていました。
そんなある日、上司がぼくのところにやってきて言うのです。
「次の定例会に出てもらうよ。議事録書いてね。」
コンサルタントは客と対面してナンボ。ようやくぼくの出番だ。「承知しました」と意気揚々と会議に向かったんです。
会議の背景がわからない
さて、いざその会議に出てみると、背景が全くわからない。
プロジェクト全体の状況はなんとなく把握しているものの、その中でこの会議では一体何を話すのか、何を話さなければいけないのか。すべてがゼロでした。
主にクライアントと話すのは上司なので、会議自体は進むんですが、ぼくはと言えば横でわかったようなふりで聞いてますよ感を全開にしていました。
どこが大事かわからない
会議の背景や目的が頭に入っていないんですから、どこが会議の要点なのかがわかるはずもありません。
クライアントの言っていることは大事なのかな、くらいはさすがに理解していたものの、雑談と議論と決議の差すら見極められず。
用語が理解できない
そんなぼくの状況なんて、会議を進める側は気にもかけないわけです。どんどん話が進んでいきます。
するとわんさか出てくるのが、わからない用語。話している側は通じ合う言葉も、ぼくにとっては#%@$¥!にしか聞こえません。
わからないんですから、もう言っている通り書くしかありません。頷きと聞いてますよ感が全開。頭の中はちんぷんかんぷん。
全部書こうとする
そんな状況なので、ぼくの右手はフル回転でした。わからないんだからとりあえずメモっとけと。一言一句を書き残すレベルで。ギリギリ読める汚い字で。
就活セミナーとかで話す側の目を見ながらものすごい勢いでメモ取る人いますよね。まさにあんな感じ。
話していることを逐一書くものだから、当然右手は疲れていきます。でも、話の内容を理解できない=頭に残らないので、メモに書かない=あとで自分が死ぬ、なわけです。もう必死ですよね。
会議中にメモ紙の余白不足やペンのインク切れが起きたらもう最悪です。苦肉の策として、手のひらや腕にメモを書いたり、筆圧でメモを取ったり・・・
1時間の会議が終わったあと、残されたのはちんぷんかんぷんの疲れた頭とA4ノートの裏表3ページ分くらいの大量のメモ。当然、構造化などされていません。
特筆すべき決定事項とToDoがわからない
いや、終わっていません。自分の席に戻り、議事録を書くところからが本番です。(その前に不明点を上司に聞くなんて気の利いたことができる人間じゃありませんでした)
会議資料をわき目に、床にぶちまけた焼きそばのようなメモを読み解きながら文字に起こし、議論の流れを議題ごとに書いていき、決定事項やToDoっぽいものを抽出してまとめ・・・パッと見はシュッとしているものをとりあえず作ります。
いや、中身はぜんぜんもっさりしているんですよ。逐語録みたいなもんですし、背景も目的も用語も理解していないから、抽出した決定事項やToDoは的外れなわけです。
正しい言い回しがわからない
そして、ぼくが一番引っかかったのは、日本語の言い回し。
いわゆる「ビジネス日本語」が全く身についていなかったため、自分の書いた日本語がビジネス文書として正しいか判断ができませんでした。
なので、1つ1つの言葉に対していちいち適切な言い回しを考えていきました。メモをほぼ全部文字に起こしているので中身の分量は多く、それだけ時間がかかります。
自己レビューの無限ループ
そんな状況にもかかわらず、自分的に90点くらいのものを出さないと!という謎の使命感を持っていたぼくは、ひたすら自分の書いた議事録の完成度を高めようとしました。
結果陥ったのは、終わることのない自己レビュー。
トピックの切り出し方がなんとなく汚い(根拠もなく)と感じたら発言の記載順を変えてみたり、やっぱりもとに戻してみたり。
ビジネス日本語の言い回しをいちいち全量見直して、全量修正をかけて、不自然に感じる部分について改めて考えてみたり。
そんな中で、これ決定事項かも?と思ったものを決定事項一覧に追加してみたり、優先度低そうと感じたものを消してみたり。
自分としては推敲しているつもり。時間はどんどん過ぎていく。90点にはなったかな?という段階で上司にレビューを依頼した時点で、会議終了から5時間が過ぎていました。
さて、上司にレビューを依頼した結果、どうなったか?
10分もしないうちに、赤入れだらけの議事録が返ってきました。デカデカと書かれた「遅すぎ」の文字と一緒に。
議事録を会議前に書く極意
ぼくは一体なにをしていたんだ・・・あまりに無価値だ・・・ノーバリューコンサルタントだ・・・。
落胆するぼくを見かねたのか、隣のプロジェクトでバリバリ活躍していた、年次が3つ上の先輩コンサルがやってきました。中途入社なので年齢は結構上。
でもすぐ慣れるよ。そのうち会議前に議事録書き終えられるようになるから
だって会議の結果の記録ですよね?
会議の議題とは何で決まるか
で、プロジェクトの提案書、ちゃんと見た?
- 会議体:プロジェクト推進に必要な会議の定義
- 議題(意思決定、課題やリスクの対応検討、役割分担表に則ったそれらの範囲など)
- 頻度(月次、週次、日次、都度など)
- それらの遂行に必要な参加者(組織)
- コミュニケーションプラン:具体的な会議計画
- 開催日時と場所
- 想定参加者
- 議題、アジェンダ
- 持参資料
逆にそれがないなら会議なんて無駄
★会議の議題は全体スケジュールから導出できる
会議の議題がわかれば議事録の骨組みは明らか
だから、骨組みくらいは会議前に書けて当然なんだわ
★決定事項やToDoに書くべきことは議題から導出できる
正しい道が明らかなら議論の中身も導ける
あっちが何言うかわからないし、突然別の話題を振ってくるかもしれないし。議事録の中身まで事前に書ききるなんて無理ですよ
プロジェクトを取り巻くクライアントの状況を、マネジメント(経営層)レベルの視点で理解できていればね
プロジェクトにおける1つ1つの意思決定はその将来と同じ方向を向いているべきなの
もちろん現場の意見も大事だから聞くんだけどね
短期的なプロジェクトの成功だけを視野に入れると絶対にA案なんだけど、視野を広げて全体最適を考えるとB案が正しい。
そんなとき、どっちを選ぶ?
でもただB案を押し通すだけじゃなくて、大枠はB案だけど細かい進め方的なところに現場の意見を取り入れたB案改で通すようにするのが大事ね。
現場の協力得られないと、いくら決めてもものごと進まないから
★決定事項の中身は、本当に正しい道を見極められれば自ずと決まる
それら踏まえて会議デザインと準備を行う
Aを決めるためにはBとCとDを明らかにすればいい、的な奴。
ロジックツリーって知ってるだろ。あれだよあれ
もしファクトさえあればそもそも議論不要なんだったらファクトを集めておく
むしろ逆に、議事録ドリブンで会議のデザインや準備をするっていう感じでいいと思う
★結論を導くための議論の流れをデザインする
★個別論点まで落とし込み、下支えるファクトまで準備できれば、議論の中身は決まり、議事録は埋まる
議事録を書く3つの理由
- 意思決定の証跡を残すため
- 関係者へのコミュニケーションのため
- 成果物として納品するため
意思決定の証跡としての議事録
これハッキリしとかないと、あとでトラブルが起きたときに責任の所在があいまいになるだろ
そんなん無駄以外の何ものでもないから
訴えられた時の証拠になるんだよ。実際にそうなった経験はな
いけど
★議事録は意思決定の責任者を明確にする道具。
コミュニケーションツールとしての議事録
会議に出られなかった人とか、会議の結果を把握しておかなければならない人に、会議の結果を伝えるのね。
決まったことがちゃんと伝わらないと、みんな好き勝手動くからさ
おまえの上司がデカデカと遅すぎって書いた理由はそれ。
っていうかほんと遅すぎだよお前。なんだよ5時間って。聞いたことねえよ
★コミュニケーションツールとしての議事録は鮮度が命
納品成果物としての議事録
だから常に議事録は残しておくべきなの
議事メモとしてメールで送るとかでもいい。
要は、記録が残っていて共有できることに意味がある
承認待ちで動かないのってイケてなさすぎるから。鮮度が命
★成果物に入っていなくても議事録を書く
★議事録のレビューと承認を早められるコミュニケーションをする
議事録作成の前提事項:会議設計の4つのポイント
5W1Hの中でも重要なのがWhy、What、Who、Howってこと。
WhereやWhenも無視できないけど優先度低め。正直どうにもなる
Why:会議の目的
これが明確じゃないと話にならん。集まるだけ無駄
忙しいんだから、理由ないもんに時間取られるなんてアホくさすぎ
★会議を開くなら、その目的は明確に
What:決めること
仕事を進めるうえで大事なのは意思決定だから
まあ、顔合わせるのは大事だけどね
関係ないことぐちゃぐちゃ言い始めるやついるけど、正直邪魔だし時間の無駄だから、そういうのを黙らせるためにも必要
★何を決めるのか、議題=議論のスコープをはっきりさせる
Who:決めるのに必要な人
何か決めるってことは、そのトピックの意思決定をする権限を持った誰かがそこにいないといけない
要するに、意思決定に必要な人間は集めとけ、ってこと
「そのため、各領域の代表者として意見いただきたく、AさんとBさんとCさんに参集いただきました」
何を決めるの?なんで自分はこの会議に出る必要があるの?(+なぜ今なの?)という疑問が晴れないことには、参加者は協力しない
★会議の各参加者に期待する役割を明確にする
How:決めるアプローチや材料
さっき言ってた、決めるアプローチとか、個別論点を決めるためのファクトとか材料ってやつ
議論が発散しまくって時間だけ過ぎてく。
で1時間くらいたった後に何も決まってないとかなる。アホでしょそれ
そこまでやれば会議前に議事録書けるな
最初から決めにかかったが、そもそも決め方が違うって怒られたことが何回かある
本当は1回の会議でバシッと決めるのが最高にカッコいいんだけど、相手がいることだししゃーない
★ものごとを決めるまでの議論の段取りを明らかにし、くさびを打つように前進させる
この先輩、何者か
俺18の時にはこれマスターしたから
後日、彼がMENSA出身であることが判明しました。
そして、周りが頭悪すぎて暇すぎるという理由でMENSAを脱退したことも・・・。
メンサ(英: Mensa)は、人口上位2%の知能指数 (IQ) を有する者の交流を主たる目的とした非営利団体である。高IQ団体としては、最も長い歴史を持つ。
まとめ:議事録と会議は表裏一体。コツを掴んで効率化を
というわけで、院卒のくせに出来の悪いクソ新卒コンサルが、MENSA出身の中卒先輩から学んだ、議事録作成と会議のデザインのコツでした。
デキる人は会議ひとつ取っても自分なりの勝利の方程式を持っているんですね。
仕事の勝ちパターンというか、デザインパターンというか。
5W1Hなどのフレームワークやいわゆる方法論というのは、それを構成する1つのツールに過ぎないのかもしれません。
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