仕事でExcelを扱うことが多いんですが、ときどき「なんだよこの意味不明なExcelは・・・」と言いたくなるゴミファイルに出会うことがあります。
どういう考えで整理されているのか、何がどの粒度で整理されているのか、どういう用途を想定したものなのか・・・
いずれもが全く不明で、「レビューしてください」「これをインプットにしてください」と言われても扱いに困ってしまいます。
一方、逆に「このExcelはセンスいいし使いやすいなあ」と思うこともあります。
センスのいいExcelと悪いExcel・・・
これらの違いをシンプルに言うなら、「シートの1行目〜3行目」に圧倒的な差がある、ということ。
Excelはセンスがモロに出る
Excelは縦横でデータを整理できる便利なツールです。
分析や描画、マクロによる自動処理その他、あらゆる機能も備えているため、やろうと思えばなんでもできます。
マリオだって作れます。
参考 【Mario】Excel Mario / エクセルでスーパーマリオを作ってみた。【完成版】 – YouTube
しかしシンプルかつ機能豊富なあまり、シートを作る人のセンスがモロに出てしまうのが玉にきず。
エクセル方眼紙+セル結合を使ったフォームなんてまさにいい例でしょう。
また以前「エクセルにオブジェクトをペタペタ貼って1枚プレゼンを作るのが極意だ」なんて話を見かけたときは、正直吐きそうになりました。
参考 ASCII.jp:“絶対Excel派”の「1枚企画書」 (1/4)|Excelで極める「1枚企画書」
これらは極端な例ですが、縦軸と横軸で情報を整理するというよくある使い方においても実はセンスがモロに出ます。
縦軸をどう整理するか、横軸にどういった属性を取るか、扱う情報粒度は適切か、最終的な用途である集計・分析を意識した設計になっているか・・・
などなど、センスが出るポイントはいろいろあるんですが・・・
横軸を見ればセンスはバレる
その中でも最もセンスが出るのが横軸。カラムの定義部分です。
カラム定義に使われる1〜3行目はExcelに埋めるデータの中身を決める重要な存在。
ここが雑だとExcelの中身もだいたい雑なゴミになります。
ゴミとは具体的には、
- データが分類整理されない
- 読み手によって解釈がぶれてしまい誤解の連鎖を引き起こす
- セルの中身の粒度が揃わず集計・分析に耐えられない
- 入力形式がバラバラでクレンジングすらままらなない
といった弊害を引き起こすものたちのこと。
要するに、何か埋まっているけど読めないし使えないデータのカタマリが生み出されるんですね。
そんなゴミExcelの生みの親が、センスのない横軸というわけです。
センスのないカラム定義による弊害の例
たとえばあなたがプロジェクト管理を担当することになったとします。
共有フォルダに「課題管理表」という名前のExcelを作りました。
1行目のカラム定義部分に、課題の中身や対応者、期限などと並んで「優先度」という項目を設けました。2行目以降は各チームに埋めてもらう前提です。
当該Excelを更新するよう、各チームに依頼しました。2時間後集まった結果を見てみると、「優先度」カラムに
- 最高
- やばいです
- すぐに対応が必要
- 中くらい
などと書かれていました。
何だこれ?と思ったあなたは「これはどういう意味なのか」を各チームに確認して回りました。
結局ほとんどの課題は「優先度:低」の範囲内のものでした・・・
さて、どうしてこんなことになったのでしょうか。
原因は優先度の定義・判断基準や記入方法が曖昧だからですよね。
各チームが各チームの事情にのっとって優先度を判断してしまっており、記入方法も定まっていなかったたため表現は自由気まま。
プロジェクト管理をする側からすると全く意味不明です。
これは「優先度」というわかりやすい例だから誰しもが一瞬で気づく間違いですが、これと同じことがあらゆるExcel、あらゆるカラムで起こる可能性があるんです。
Excelを扱う人間は、カラムの定義が甘いことによるリスクや弊害に常に晒されているということです。
センスの良いExcelの1〜3行目に書いてあること
センスの良いExcelの最低条件はカラム定義がしっかりしていることです。
先程の例では1行目にカラムの名前を書いただけしたが、これじゃ足りません。
センスの良いExcelには、少なくとも1〜3行目に下記ポイントが書かれています。
1行目:伝わりやすいカラム名
1行目は、カラムの名前です。
人によって解釈がぶれにくい名称を使えると良いのですが、コミュニケーションツールとしてExcelを使う場合は「伝わりやすい」「イメージが湧きやすい」ことを重視します。
先ほど課題管理表でいえば「課題内容」「優先度」「対応期限」「対応者」などを使うのが一般的ですのでそれに従ったほうが良いでしょう。
分析をする際の項目名としても使われるため、短くバシッと端的な言い回しだと好ましいです。
2行目:カラムの厳密な定義
2行目は、カラムの厳密な定義です。
カラムはデータを横串で見渡すためのものです。
視点・観点、基準、フォーマット、粒度など、横串でものごとを見るためには揃えるべきポイントをきちんとここで定義してあげましょう。
先程の課題管理票の「優先度」の例であれば、
- 最高:全チームの進捗をただちに阻害するもの
- 高:全チームの進捗を阻害しうるもの
- 中:自チームの進捗をただちに阻害するもの
- 低:自チームの進捗のみを阻害しうるもの
などの定義が書かれているだけでも情報の精度はグッと上がるでしょう。(上記サンプルは適当です)
3行目:記載サンプル
3行目は、記載サンプルです。
記載サンプルには、実際にどのような情報・データが記入されているべきかの例示します。
2行目にカラムの定義を書いたのになんでわざわざ記載サンプルまで?と思われるかもしれません。
しかし、思い出してみてください。役所に何かの申請を出しに行くとき、自分の記入する用紙の横に置くのは「記入例」の書かれた紙ですよね?
カラムの厳密な定義はいわゆる「記入ルール」です。ルールだけを見せても適切な記入方法は伝わりません。記入者はサンプルに沿っているか?で答え合わせをするからです。
先ほどの課題管理の「優先度」は、カラム定義だけでほぼ明確に伝わる特殊なパターンです。それ以外のほとんどのカラムは、記入サンプルがないとマトモな情報が入ってきません。
それにExcelを読む人にとっても、「結局このカラムはなんの情報がどう表現されているのか?」がパット見でわかるほうが伝わりやすいでしょう。
最低限のカラム定義をしているか?
センスの良いExcelは、
- セルを埋める人にやさしい
- 集計・分析する人が扱いやすい
- 半年後や1年後にそのExcelを見る人が誤解しにくい
という特徴を持っています。それらを形作るのが1〜3行目「カラム定義」だということ。
なお「半年後や1年後にExcelを見る人」には自分自身も含まれます。
とりあえず1行目にカラム名だけ書いてデータを集めてみたけど、半年たってみたときに「コレなんだっけ?」となるのは自分かもしれませんよ。
まとめ:Excelは必ずカラム定義とセットで
以上、センスの良いExcelは少なくともカラム定義がしっかりしている、というお話でした。
縦横で整理するために「とりあえずシートを作る」人もいるかもしれませんが、
- 通じやすいカラム名か?
- カラム定義は厳密で解釈はぶれにくくないか?
- 記載サンプルは初見殺しではないか?
の3点を面倒がらずに自己レビュー(+可能であれば上司や同僚のレビュー)をすることで、そのExcelに関わるすべての人を少しだけ幸せにできます。
逆にこれらがなってないゴミExcelは、そのExcelファイルが使われる期間中、関係者を苦しめることになります。
それが回り回って「作ったやつが情報整理し直せ」と自分が尻拭いをすることになるかもしれません。
ショートカットキーを極めたりマクロによる無駄作業の自動化を目指すのもいいですが、その前にまずはExcel上でのデータ設計そのものに注目してみてはいかがでしょうか。
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