「今書いている日報メールにどのくらいのコストをかけたんだろう?」
・・・なんて考えたこと、ありますか?
月給から時給を逆算して「自分は時給XXX円で働いている」という計算まではしている人は多いと思います。
しかし、その時間を使って生み出されたアウトプットに対して「コレにかかったコストはいくら?」まで考えることは少ないのではないでしょうか。
今回は「時間のコスト」ではなく、「アウトプットのコスト」について考えてみたいと思います。
アウトプットのコストの計算方法
アウトプットのコストを考える方法はとても簡単です。
自分の月収を規定の労働時間で割った時給に、アウトプットにかけた時間をかければいいんです。
例を見てみましょう。
月収20万円が日報メールを書いた場合
土方(ひじかた)さんはシステム開発を行う「部楽社」で働くプログラマです。
普段は本社とは別の客先に常駐し、現場リーダーの指揮下でプログラムを書いています。
仕事がうまく回った日の17時45分。そろそろ一日の作業をまとめた日報をリーダーに送る時間です。
土方さんは定められたフォーマットにその日の実績を記入し、送付します。かかった時間は約10分。
さて、その日報メールにはいくらのコストがかかっているでしょうか。
試算してみましょう。
- 1ヶ月で20営業日働くとして、1日あたり1万円
- 仮に1日8時間としたら土方さんは時給1250円
- 10分に換算すると、1250÷6=約200円
つまり土方さんの日報メールは200円のコストがかかっていることになりますね。
月収20万円が10人集まる会議の場合
ある日、土方さんは自分の担当するプログラムの作り方が実は全体に大きな影響を及ぼすことに気が付きました。
そこで土方さんは関係するプログラマを集め、どういう仕組みにするとよいか議論することにしました
参加するのは、土方さんと同じ条件で働くメンバー10人。30分のディスカッションで方針を決めることとしました。
さて、このディスカッションにかかるコストを同じように時給換算して試算してみましょう。
- 月収20万の人の時給1250円
- 10人なので、1時間あたり12500円
- 12500円×0.5時間=6250円
というわけで、この会議のコストは6250円ということになります。
月収20万円が2回レビューした資料
土方さんはディスカッションの結果をまとめ、反映した設計を資料にまとめました。かけた時間は1時間です。
念のためディスカッションの参加者にクロスレビューを依頼することにしました。レビュー者は会議参加者のうちより深い知見を持っている2名。
1回のレビューとフィードバック、修正でかかる時間はのべ30分です。
さて、その設計資料にかかったコストを計算してみましょう。
- 月収20万の人の時給1250円
- かかった時間は初版作成に1時間、レビュー2回で0.5時間×2
- 1250円×(1+0.5×2)=2500円
というわけで、この設計資料の作成&レビューにかかったコストは2500円ということになります。
客から見ると時給は4倍
なんだそのくらいか・・・と思うかもしれません。
メール1本200円、10人参加の30分会議で6250円。
そこまで大きな金額には見えないと思います。
しかし実はこの計算、正しくありません。
なぜなら土方さんは月80万円で客先に派遣されていたからです。
月収と客への請求額は全然違う
月収20万なのに客には80万請求ってそりゃおかしいだろ!差額どこいった?
・・・と、思うかもしれません。
差額の行き先は、土方さんが会社の一員として動くため、そして土方さんの所属する部楽社が会社として機能するための仕組みに回されています。
- 管理部門の人員
- 自社システムの維持管理
- 外部サービスの利用
- 不動産や備品
- 研修や人材募集
総務や法務、経理や人事など、管理部門の人は土方さんのかわりに裏側の仕事をやってくれています。
彼ら・彼女らも土方さんとおなじ社員ですので給料を払わないといけません。
また、自社システムがなければタイムカードはおろかメールもチャットも使えません。
何年に一度か交換してもらっているパソコンだってタダじゃないんです。
自社オフィスには地代家賃がかかりますし、備品も必要です。
人材募集にもコストがかかりますし、社員研修も必要でしょう。
細かく言うともっとありますが、こういった間接的な費用が、客への請求額80万円と土方さんの月収20万円の差額に全部入っているんです。
つまり差額の60万円は、土方さんが部楽社の人間として仕事をするために使われているってことですね。
アウトプットは客のため。時給計算の基準は?
ここで忘れてはいけないのは、土方さんは客先常駐で客のために仕事をしているということ。
客からすると「部楽社の土方さん」を月80万円、つまり時給5000円で雇っていることになりますから、雇った結果として得られるアウトプットは時給5000円で計算しないとおかしくなりますね。
したがって客から見ると、土方さんの日報メールにかかったコストは200円ではなく800円です。
10人で30分ディスカッションした会議は6250円でなく25000円のコストがかかっています。
のべ2時間かけた設計書の作成とレビューにかけたコストは2500円ではなく10000円です。
土方さんのアウトプットのコスト計算は、自分の月収20万円ではなく、客に請求している80万円を基準に計算しないとおかしいんです。
自分の月収基準で考えてはいけない
もし土方さんがこの事実を知らず、「月収20万だから時給1250円にみあう仕事だけすりゃいいや」とタラタラしていたらどうなるでしょうか。
客からすると「部楽社の土方さん時給5000円なのにサボりすぎだろ」となりますよね。
1時間かけて書いたコードにかかったコストは、1250円ではなく5000円です。
3時間かけたバグ取りにかかったコストは、3750円ではなく15000円です。
8時間かけて書いた設計書にかかったコストは、10000円ではなく40000円です。
さて、同じように計算したとき、あなたのアウトプットにはいくらのコストがかかっているでしょうか?
そのアウトプットはコストに見合った品質になっていますか?
あなた1枚1時間かけて一生懸命書いたパワポの資料10枚組、「全部で50000円です」と言えるものになっていますか?
アウトプットのコストを考えると時間効率に目が行く
このような「時間あたりにかかるコスト」を考えると、アウトプットにかける時間を短く=より効率的に動かないといけない、という気になってきますよね。
たかが日報なら10分もかける必要はないはず。
定型文を少し書き換えるようにすれば5分で終わるかもしれません。
10人集めた30分の会議も、「念のため呼んだ」系の参加者を省いても結果は変わらないはず。
コアメンバー3人だけでやれば、かかるコストは1/3で済みます。
あの設計書は全体方針にかかわる重要なものだから念入りなレビューを含めて1時間かける価値はあるかもしれない。
一方、この説明資料は単なる客同士のケンカ仲裁のためのもので本質的な価値を生まないから、配色やレイアウトにこだわるより箇条書きで整理して早めに持っていったほうがいいかもしれない。
「このアウトプットにはいくらかかっているのか?」を考えることで、自分の時間は有料でありかつ高額だからこそ、短時間でモノゴトをこなさなければ、と思えるのではないでしょうか。
客目線で考えると自分の時給は何倍にも跳ね上がるので特に効果的ですよ。
まとめ:アウトプットのコストを考えてみよう
というわけで、アウトプットのコストを客目線で考えると時間効率に目が行ってとても良いですよ、というお話でした。
- 今まさに作っている資料にいくらのコストがかかっているか?
- 特に客視点(請求額)だとコストはどのくらいなのか?
もし自分の月収を時給換算し、その安さにつられダラダラ仕事をしている人がいたら、声を大にして言いたい。
客から見ると、あなたの時給はその4倍なんですよ、と。
もちろん会社によってはピンハネがひどい場合もあるかもしれません。
部楽社が月収20万円の土方さんを月300万円で売っていたら「そりゃおかしいだろ」ですし。
大事なのは、自分がいくらで買われているか?を意識することなんだよってことで。
おまけ:客への請求額=月収にする方法
「いやいや、実際に客に価値を提供してるのは自分なんだけど」
「なのに自分の給料が請求額の1/4なのは納得いかない」
と土方さんは思うかもしれません。
まあ、そうですよね。客への提供価値にみあった報酬をもらわないと納得できませんよね。
請求額=月収にする方法はもちろんあります。独立してフリーランスになればいいんです。
ただし、契約書や請求書、入金や経費精算、決算書の作成など、客へのサービスとは無関係の裏方を全部自前でやることになります。
それにパソコンやネットその他の必要経費は結局客への請求額=月収から差し引くことになります。
また独立すると「部楽社の土方さん」ではなく単に個人としての「土方さん」になりますので、「部楽社」の持っているノウハウや実績、人脈をベースに高めの額を請求することも難しくなるでしょう。
また部楽社の提供する各種保険や厚生年金に乗っかることができないので、そこらへんのお金も結局は請求額=月収から差し引かれることになります。
つまり、請求額=月収にはなりますが、そのぶん自分のやることや出ていくお金が増えていきます。
最終的に「利益」として自分のお財布に入る値段がどうなるかは、請求額=自分のスキルの評価額次第。
見かけの月収は確実に上がりますが、厳しい世界だと思います。
それでもよい、自分のスキルひとつで生きていきたいという人は、ぜひフリーランスになってみてはいかがでしょうか。
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