これまで本棚がまるごと埋まるくらいの量のビジネノウハウ本を読んできました。
それら経験から導かれた結論は、知識レベルでは結局「7つの習慣」「イシューよりはじめよ」「ロジカルシンキング」「人を動かす」あたりの名著を読んでおけばいいんじゃないの?ということ。
だとすると名著以外のビジネスノウハウ本の存在価値ってなんだろう?
特にネットでいろいろと情報が手に入る時代にあえてなんでビジネス本なのか?
・・・ということを考えてみたので書いてみたいと思います。
ビジネスノウハウ本のヒエラルキー
ビジネスノウハウ本はピラミッドの形をしています。
上は幅広く応用ができる法則や原則の話。冒頭であげた「名著」が入るところです。
下に行くほど具体的なシチュエーションや領域に特化したHowの話が登場してきます。
上に行くほど抽象的、下に行くほど具体的になっていくんですね。
下層のビジネスノウハウ本に書いてあること
これを言いかえると、「ノウハウ」に近い下の方の本は上の「名著」の焼き直しということ。
言い回しは異なるものの、根本的な内容は実は同じだったりします。
そりゃそうですよね。抽象的な法則を具体的な状況にあてはめたものなんですから。
たとえば「ロジカルシンキング」に書いてある「So What/Why」や「MECE」は、タスクの組み立てや資料の構成、プレゼンのやり方まで応用可能なものです。
逆に下層の本のタイトル「サルでもわかる計画のたてかた」「わかりやすい資料構成」「圧倒的に伝わるプレゼン」のエッセンスを抽出すると「So What/Why」や「MECE」が出てきます。(もちろん方向性を変えれば別のエッセンスも抽出できます)
すなわち知識としてはヒエラルキーの上位にある「名著」を読めば足りるはずなんです。
具体的な話はネットに転がっている
加えて、時代はインターネット。
こと細かなシチュエーションに「名著」の法則を当てはめたプチノウハウは、検索すればいくらでも出てきます。
もちろん無料で手に入るネットの情報にこの世のすべてが書かれているわけではありませんし、情報の信頼性は落ちますが、知識を学ぶなら実は十分だったりします。
インターネット時代におけるビジネスノウハウ本の価値
しかしビジネス書は日々発刊され続け、売れ続けています。なぜなのでしょうか。
上層の名著群と下層のビジネスノウハウ本群に書いてある知識は変わらない、という前提で考えると、下層本の差別化要素になりうるのは「著者の経験による裏打ち」と「語り口」の2つだからです。
著者の経験による裏打ち
数学や理学、工学における法則とは違って、ビジネスにおける法則はとてもゆらぎが大きいものです。
法則が効力を発揮する範囲は正直いって「場合による」としか言えません。場合によっては法則と逆を行くほうがことがうまくいくときもあります。
名著に書かれた知識を学び実践したが、法則の世界とは異なる結果をまのあたりにした読者はおそらく「なぜなのか」と思うでしょう。「なにがいけなかったんだ」と。
そこで「実際にこういうシチュエーションでもこの法則は使えたよ」という経験談が聞けるとしたらどうでしょう。きっとお金を出してでも読みたいですよね。
つまり法則に対する著者の経験談が、読者にとって差別化要素になるんです。
語り口
法則というものはえてして語り口が難しくなるものです。抽象的な概念、幅広く適用可能な言い回しをする傾向があります。そのためぱっと見てわかりにくいんです。
たとえば「ものごとはMECEに分解しろ」と言われても、MECEを知らない人や言葉の意味しか理解していない人は「?」ですよね。
そうではなくて「日本は都道府県で分けると漏れもダブりもない。こういう分類をするとなにかと便利」というような語り口ならどうでしょう。一気にわかりやすくなりますよね。
また読者によってわかりやすい語り口は変わります。とりあげる例によってはピンとくる人こない人がいます。ここは著者との相性でもあります。
読者にとっては自分にとってわかりやすい言い方でないとストンと腹に落ちないということです。読者目線では、語り口自体が差別化要素になりうるのです。
ビジネスノウハウ本の輪廻
「著者の経験による裏打ち」「語り口」の2点が下層ビジネスノウハウ本の差別化要素だとすると、それら本の価値はすなわち「事例」ということになります。
さて、読者によって響きやすい事例は時代によって変わります。
たとえばITの世界でいうなら「ブレードサーバーの選び方」よりも「インフラクラウドの選び方」のほうがピンとくる人が多いでしょう。「物流と営業力を駆使した代理店型の販売」より「ネットとリアルを融合した体験型販売」のほうが今は読まれやすいと思います。
もちろん中には時代に左右されにくい事例もあるかと思いますが、事例には賞味期限がある事実は変わりません。事例の陳腐化にあわせて下層ビジネスノウハウ本の内容もどんどん陳腐化していきます。
事例の賞味期限がビジネスノウハウ本の賞味期限、ということです。そして死にゆく本たちにかわり、新たな時代を繁栄した事例にもとづくビジネスノウハウ本が生まれてくる、というわけです。
まとめ:ビジネスノウハウ本は書かれ続ける
というわけで、ビジネス本ヒエラルキーの下層に位置するビジネスノウハウ本はこれからも書かれ続けるでしょう。
そして、その差別化要素が「著者の経験」「語り口」であることは、時代が流れ事例が陳腐化していく以上、これからも変わらないと考えました。
あまりまとまりのない雑記ですが、こんなところです。
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