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部下が育たない「巻取り文化」が正当化されてしまういくつかの要因

部下の人材育成 キャリアアップ

クライアントの部長さんとの雑談で、資料レビューの話になったときのこと。

ふとしたことから部下の育成の話になったのですが……

資料という意味でいえば、

  1. 上司のレビューを通して、自力で資料を完成しきる
  2. 資料が上司のその先の人(クライアントや、上司の上司)に出て、OKをもらう様子を見る
  3. 上司から「よくやった」と褒められる

までがワンセットで、この成功体験を積ませないと下の子は育たないと思うのですが……

という話をしたところ、クライアントから「巻取り文化」が正当化されてしまういくつかの要因について話を聞けました。

そこで今回は、その要因に加えて、それを受けてなお部下育成を行うためのいくつかのアイデアを共有したいと思います。

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要因1) 人材・リソース不足

1つ目が、そもそも仕事量に対して人材・リソースが少なすぎること。

自分の仕事に手いっぱいで、部下のレビューや「最後までやらせる」につきあう時間が取れないのです。

  1. 資料提出の納期がすぐそこ
  2. 部下にやらせるより、自分がやったほうが早い
  3. だから部下の仕事を「巻取る」が正しい

こうして、部下に手をかける時間をしっかり取れないようになってしまうとのことでした。

要因2) 人材ローテーション制度

2つ目が、2~3年スパンの人材ローテーション制度によるマイナス影響です。

人材ローテーション制度とは、組織の人材を2~3年で入れかえる、いわゆる「定期的な配置換え」の制度。

人材にいろいろな職種を経験させることや、組織のリフレッシュがその目的なのですが、現場では諦めがはびこっているとのこと。

  • 上司→部下:「どうせすぐいなくなるしな」
  • 部下→上司:「この人も来てすぐなんだろ」

短いスパンでのローテをくり返した結果、社歴は長い一方で、部門の業務に関する専門性が浅い人が大半という。

メモ

大企業がコンサル頼りな理由がここにありあす

要因3) 形骸化した自己研修

では専門性を育てるための研修メニューを整備しよう!

と、導入されているのがeラーニングだそうなのですが、これが形骸化しているとのこと。

コースのラインナップ自体は充実している一方、受ける側の自己研鑽意識が低空飛行しているそうなのです。

理由はいくつかあるそうですが、大きなところは下記2点。

  • 仕事が忙しく、自己研鑽の時間が取れない
  • 上司などからガイドがなく、どのコースを受けるべきかわからない

「スキルアップは自分自身で取り組むものだ」という丸投げ的な暗黙の文化も手伝って、学びの機会はあるけど学べていないのが実情とのこと。

結果、全社員が受講必須(受けなければ査定に響く)のもの以外、ほぼ見向きもされない状態だそうです。

メモ

これは弊社も一緒で、受講必須研修の確認テストの回答が出回っていたりします……

「巻取り文化」の中で部下を育てるために、個々人でできること

これはかなり根深い問題です。文化風土や人材が絡みますので、解決まで2~3年以上は覚悟しなければなりません。

とはいえ、そんなに待てないのが実情です。人材育成は企業のためである一方、社員一人ひとりのキャリアアップのためでもあるからです。

かわいい部下たちの2~3年を無駄にしないため、短いスパンであっても現場レベルで個々人ができるQuick Winは取り組むべきでしょう。

では、具体的になにをすればよいのでしょうか?

ここでは例として、ぼくが個人的に意識していることを共有してみます。

「レビュー」時間をまず確保する

まず、自分の持ち時間から、部下からの相談やレビューにあてる時間を差し引きます。

1日8時間とすると、そのうち2時間は必ず部下に使うと決めるのです。

自分の仕事を終わらせて余った時間をレビューにあてると、結局レビュー時間が劣後されてしまうからです。

「給料をから貯金額を差し引いた残りで生活を賄う」という貯金方法と同じですね。

濃淡をつけて「手放し」する

ただし、部下全員をこまごまレビューして回ると、確保した2時間なんてすぐに使いきってしまいます。

そこで、レビューに濃淡をつけることで、効率的にレビューを回すことを考えます。

たとえばプレゼン資料のレビューの場合、次のようなレベル感があるのですが……

  1. 目的や文脈だけ認識をあわせ、中身は任せる
  2. 記載内容や資料レイアウトまでレビューする
  3. 細かな表現や作り方までこまごまと指示する

デキる部下なら1.だけ。経験の浅い部下の場合は3.まで、というように、対応の深さを変えるのです。

そして最初は3.が必要だった部下に対して、様子をみながらレビューの深さを2.→1.と変えていき、段階的に「手放し」していきます。

こうすることで、限られたレビュー時間で効率的・かつ相手にあったフィードバックを与えることができます。

相手にあったフィードバックの重要性については、次の記事でも解説しています。

参考 部下への指示の仕方についての個人的な最適解

自分の生産性を高める

レビューに2時間確保したので、自分は2時間残業……

ではさすがに芸がありません。

そこは自分も工夫して、残された6時間で8時間分の仕事をこなしましょう。生産性を高めるんです。

手前味噌ですが、ぼくがやって効果的だった方法を下記書籍にまとめています。

参考 外資系コンサルは「無理難題」をこう解決します。「最高の生産性」を生み出す仕事術

部下の昇進を自分のKPIにしてはどうか

社内に話を限定すると、部下が育った先にあるのは部下の昇進です。

つまり、部下が自分のかわりを務められるようにすることが、部下の育成の行き着く先といえます。

するとどうなるか。自分も1つ上の立場になる必要が出てきます。玉突きで昇進するのです。

これ、お互いハッピーですよね。

この状態を作るために、まずは部下を育て昇進させることを自分のKPIとするといいのではないでしょうか。

参考 出世する人が満たしている3つの条件と、15の行動様式

まとめ:「人財」と思うなら、大事に育てよう

人材育成は、「企業のため」という意味では、企業の競争力を底上げする長くて大事な取り組みです。

同時に、「社員のため」という意味では、一人ひとりのキャリア形成を助け、「仕事人」としての成長を助ける活動とも言えます。

目の前の締め切りに追われ、部下に目をかけられない。企業のルールの関係で、育成に積極的に取り組めない。

このような状態にあっても、目の前で必死こいて動いてくれているかわいい部下たちのため、上司である自分が少し工夫して生産性をあげることで、部下に手をかけられる状態を作ってあげる

そうすれば、企業も自分も部下たちも、みんながハッピーになれるのではないでしょうか。

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