こんにちは、NAEです。
もう10年以上前の話になるのですが、父がある日ぼくにこうアドバイスしました。
「NAEよ、リーダーになりたいなら、トイレでは必ず真ん中の便器を使いなさい」
今回はそんなお話。
トイレで真ん中の便器?アドバイスの背景
なぜトイレなのか?なぜ真ん中なのか?
答を読み解くために、ぼくの父について少し話したいと思います。
元経営者の父、その組織運営スタイル
ぼくの父は元経営者です。経営者といっても自営業ではなく雇われ社長、日本企業の海外支社長です。
彼が組織を束ねるスタイルは「中庸」。
意見を聞き、束ね、社長としての意思入れをしたうえで同じ方向を向かせることで社が一丸となることを是としていました。
声を聞き、伝えるのに最適なポジション
そのため、彼はコミュニケーションに常に気を配っていました。
- 部下や関係者の声が聞こえること
- すばやい合意形成ができること
- 自分の考える将来の方向を伝えられること
これら3点を最も効率的に満たすことができるポジションは人の中心です。人の中心にいることが、彼のスタイルで人と組織をまとめるために必須条件だったのです。
人の中心にいることを習慣化せよ
父は22歳で働き始めてからずっと社長になることを目指していたといいます。
ゴールが決まれば猪突猛進、そしてきわめてまじめで厳格な性格の父です。
おそらく社長に必要なスキルやマインドは何かを考え、それらを身につけるべく行動目標を掲げていたと思います。
当然、日々の行動のひとつひとつがその目標達成に貢献するものであったはず。
そのひとつが、人の中心にいることを習慣化するために、トイレであっても真ん中に行くことを意識する、だったのだと思います。
つまり、父のアドバイスの真意はこう。
「リーダーになりたければ、常に人の中心にいることを心がけよ。そこがトイレであってもだ。」
父なりのリーダー像、成功体験、それに至る方法論、さまざまな要素がからまりあって、「真ん中のトイレを使え」と言っていたのです。
トイレで真ん中の便器を使った結果
さて、このアドバイスを受けた10年以上前のぼくが何をしたかというと・・・
パっとしないテニサー幹部だったぼく
その前に、ぼくがどんな人間だったか話させてください。
当時のぼくは大学でテニスサークルの幹部を務めていました。
しかし残念なことに、ぼくはものすごくきまじめで頭が硬かった。
人を盛り上げ笑わせるのも苦手でした。しかもテニスの実力もパッとしませんでした。
そのため自然と人が集まる他の同期幹部が羨ましくて仕方がありませんでした。
どうにかして存在感を出していかないとサークル運営の雑務をこなすだけのマシンになってしまう。
「NAEって幹部?いたっけそんなん?」と思われてしまう。
危機感はつのるけど、どうすればよいかわからない。まさに思考停止状態だったのです。
アドバイスにとびつき愚直に実行した
そこで聞いたのが父の言葉でした。
「NAEよ、リーダーになりたいなら、トイレでは必ず真ん中の便器を使いなさい」
リーダーになりたい。人の中心になりたい。口から手が出るほど叶えたい思い。そして、ほしかったアドバイス。
リーダーになるためには、トイレでは真ん中の便器を使えばよかったのか。なんて簡単なんだろう。
翌日から、ぼくはさっそく真ん中の便器を使い始めました。
すべて空いているなら端の便器を使う、誰かが使っていたらそこから遠い方の端の便器を使うなど、男子トイレでのポジショニングにおける不文律。
そんなものをかなぐり捨てて、あえてひたすら真ん中の便器を使う。
はじめは多少の背徳感や他人の視線などを気にしていたが、慣れてくればなんということはありませんでした。
ただ、心を無にして真ん中の便器へ歩を進めればよい。
得られたものは、変なトイレスキル
そうしてぼくが手に入れたもの。それは
どんなときも真ん中の便器を使うことをいとわないスキル
結局リーダーシップなど身につかなかったし、サークルの中心にもなれなかったのは言うまでもありません。
心から当時のぼくを殴りたい
あ、でも多少の度胸は手に入りました。
「トイレでは真ん中の便器」というアドバイスの真意を理解していなかった
ぼくが見誤ったのは目的と手段、そしてアドバイスの真意でした。
父は
- 社長になるという志を持っており
- 実現条件のひとつに「人の中心にいるポジショニング術」の習得があり
- 習得手段として「常に人の中心にいることを心がける」ことを選び
- 行動習慣として「トイレでいつも真ん中の便器を使う」を実践していた
という背景や真意をもった上で、アドバイスとして「真ん中の便器を使え」と言っていたのでした。
そして、ぼくは言われたとおり真ん中の便器を使い続けた。
言われたことを愚直にこなす。行動だけを切り取ってまねをする。それでも一定のスキルは身につくかもしれません。
しかし、その裏にある考え方、目的や志を理解しなければ、ただ真ん中の便器を躊躇なく使うスキルが身につくようなしょっぱい結果にしかなりません。
本来は順番が逆なんですよ。志があり、目的・目標があり、達成に向けたマイルストンがあり、アプローチがあり、そして行動がある。
アドバイスで言われた末端のHowだけやっても、意味のある行動にはなりにくい。
「資料のホチキス止めは斜め45度に揃えてね」というアドバイスを真に受けて、ホチキス止めの角度を正確に45度にするスキルを身につけても意味がないのです。
まとめ:アドバイスはそのまま受け取らず真意を汲み取れ
というわけで、何も考えずにアドバイスを愚直に実行するリスクのお話でした。
ちまたには
- XXXを実現するための3つの方法
- XXXがXXXになるたった1つの理由
- 初心者でもXXXできる!5つのTips
などといったアドバイス(ハウツー)がこれでもかと溢れています。
これらは何かを始めたり改善する第一歩であることは確かですし、価値のある情報です。
ただし、このようなハウツー的なアドバイスを行動レベルでこなし続けるのは危険です。ぼくと同じ失敗をする可能性が高い。
それより、行動する前にアドバイスの真意を汲み取り、考え、自分がアドバイスに従う積極的な理由=志に思いを馳せるべきです。
少年よ、大志を抱け。 – ウィリアム・スミス・クラーク
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