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コンサルタントは「できない」と言ってはいけない?いやいや

常に「できます」と言う 人と組織

コンサルタントの諸先輩方がときどき

『コンサルたるものクライアントの前で「できない」と言ってはいけない』

と言っているところをみかける。

 

でもこれは本当だろうか?

そうじゃないだろう、と思う理由を書いてみる。

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理由1:人材教育目的の精神論である

「Can Doの精神」という言葉がある。できない理由よりできる方法を考えよう、という前向きな思考回路を意味する。

なにかを考えるとき、最初の一歩が「オレたちはできる」と思い込む(思い込ませる)、ということだ。

一方、コンサルタントは考える時間が仕事の多くを占める。そのため思考における行動様式=思考回路をスキルアップ方面にチューニングするのは、人材育成において重要な基礎教育である。

  • Can Doの精神に乏しい
    =できない・難しいと感じたことに挑戦しない
    =スキルの伸びしろを失う

 

とはいえ、人材教育とビジネスでは話が別だ。

現実的にデリバリーできないものを、できると言い切る。それもクライアントの前で言い切ると、そこに「口約束」が発生する。そして「口約束」であっても、クライアントとの約束は守るべきだ。

できる約束ならまだいい。しかし本来的にはできない約束を守るには相応の覚悟とコストが必要だ。また「ごめんなさい」して約束を破るとしても、相当の説明が必要になる。

いずれにせよ、できないことを「できる」と言い切る行いが、高いコストを引き連れてくるのである。

 

人材教育の一環で施した「できないと言うな」を、ビジネスシーンにまで持ち込むべきではない。

理由2:「一方良し」に傾倒しかねない

『クライアントは「できる」と言い切るコンサルタントを信用するんだよ』

と、冒頭の先輩は言っていた。

 

たしかに、直近のビジネスのために「できない」を「できる」と言い切る場面も必要だ。

コンサルティングファームのほとんどは人月商売。継続的に提案し、案件を獲得しないとビジネスが継続できない。

これはファーム全体だけでなく、現場でクライアントについているコンサルタントも同様である。

クライアントや案件ごとに「お財布」が管理されており、売上高や利益率などが厳密に管理される。そして、一定のポジションになると年間売上高がポジションキープの指標となる。

そのため、本来的に「できない」仕事であっても、身を切ってでも「できる」と言い切り、案件獲得にひた走るのである。

 

しかし、クライアントからするとコンサルファームの社内KPIなど知ったことではない。

コンサルファームが自社に嬉しい提案をしてきたら採用する。それだけである。

にもかかわらず、コンサルファームが自社利益を優先するあまり、丸い穴に四角い棒を突っ込もうとしてくるのは本末転倒だ。

もちろん、手練のコンサルはクライアントの課題と自社の強み・サービスをつなげるストーリー作りが驚くほど上手い。

とはいえセールスストーリーをいくら語ろうとも、入るものは入るし、入らないものは入らないのだ。

自社利益、ひいては自分のポジションを優先するあまり「一方良し」に陥るのは、次に述べる理由から、大変によろしくない。

理由3:長期的には自社が損するリスクあり

コンサルファームが自社利益ばかり追求する提案ばかりしてきたら、クライアントはきっとこう思うだろう。

「このコンサルファームは、丸い穴に四角い棒を突っ込んでくる危ないやつらだ」

 

こう思われたら、おそらく次の仕事を取るのは苦労する。信頼を損ねているからだ。

信頼には、「行動による信頼」と「言葉による信頼」がある。

  • 行動による信頼:
    実際に目の辺りにした行動とその結果にもとづいてで信頼すること。いわゆる「実績資産」
  • 言葉による信頼:
    言っていることや立ち居振る舞いなどに基づいて信頼すること。いわゆる「錯覚試算」

2つのうちより強固なのが、「行動による信頼」である。「言葉による信頼」が非常に儚いことを、人々はよく理解しているからだ。

丸い穴に無理やり四角い棒を入れようとするのは、程度にもよるものの、「行動による信頼」に傷がつく。

 

信頼されていない相手とのコミュニケーションは、常に疑義から始まる。それを乗り越えて仕事を取るのは、かなり大変だ。

マーケティングでよく「新規顧客の獲得コストは、既存顧客の継続コストの5倍かかる」と言われている。

これはコンサルの提案でも同じで、初めておつきあいするクライアント向け案件の提案書は50ページ規模である一方、継続案件だと5ページで済んだりする。

信頼の土台のありやなしやで、案件獲得にかかるコストに天と地ほどの差がでるのだ。当然、コストは低いほうが良い。

 

「できないと言わない」という行動様式ひとつで無理に提案を突っ込んだ結果、信頼を損ね、継続案件の獲得コストがかさむのは、提案する側のコンサルファームとしても損な立ち回りだろう。

 まとめ:より大きなミッションを忘れていないか

コンサルタントはクライアントに「できない」言って良い。

なぜならコンサルタントのミッションは、クライアントを無理に自社のビジネスに引き込むことではなく、クライアントの課題を解決することだから。

ミッション達成に自社のサービス・強みが最適なら「できる。やらせて」といえばいい。

逆に自社のサービスや強みがあまりフィットしないことがわかりきっている状態で「できます。なぜなら~」と言うのは、むしろクライアントを不幸にしかねない。

クライアントのこと第一に考えるのなら、

  • 自社でできないことは素直に「できない」と言う
  • そのうえで、どうすればできるかを提案する(自社のビジネスにならずとも)

とするほうが良いのではないか。

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