現在80人規模のプロジェクトにいるのですが、このくらいの規模になると
- 「上意下達」が難しいためコミュニケーション工数が馬鹿にならない
- 長期プロジェクトになりやすいがゆえ、人材育成の点も考慮が必要
という側面が出てきます。
しかしコンサルの提案ではこれらコストは無視されがち。
場合によってはコミュニケーション工数は「PMO」として確保されますが、人材育成にかかるコストは、SVによるOJTの名のもとに、完全無視されることがほとんどです。
これは非常によろしくない。大規模プロジェクトではちゃんと人材育成の工数を、内数として積みましょう。
……というお話をします。
本記事における「大規模」の定義
30名以上のチームを想定します。
理由は、30名以上になると
- リーダー・メンバー間にミドルマネジメントが入る多層化組織になりやすい
- プロジェクト規模的に、新人・超若手の投入を社から求められやすい
という性質が強まるためです。(2点目はファームによると思います)
要するに、人材育成の対象が増え、かつ必要なコミュニケーションも増える、ということです。
なぜ人材育成コストが無視されるのか
にもかかわらず、プロジェクトを提案する時点で人材育成のコストは無視されてしまいがちです。
理由は、提案時の説明ロジックがないからに尽きます。
- プロジェクトのわかりやすい成果=成果物(納品物)
- クライアント説明しやすいロジック=成果物の作成に直結する工数の積み上げ
- 「間接工数」である人材育成コストは、そもそも見向きもされない
もちろん、成果物それぞれに「OJTコスト」的なサムシングを上乗せできるなら話は別。
しかし、そんなことまれです。提案内容レビューで「こんな資料なんて0.5人月ありゃできるだろ」と、ガンガン工数が圧縮されていきます。(そもそもコンサルは単価が高いので、工数を圧縮しないとリーズナブルな価格にならない)
言うなれば、ジュニア・シニア問わず、全員がスーパーサイヤ人である前提で工数が見積もられてしまう、ということ。
現実、全員がスーパーサイヤ人なわけではないにもかかわらず、です。
人材育成の工数が取られない弊害
もちろん、小規模プロジェクトならまだこれでも回ります。
人材育成の対象が少なく、またコミュニケーションコストも無駄に増大しにくいからです。
しかし大規模プロジェクトは違います。
小規模プロジェクトのノリで「成果物作成工数積み上げ式」で見積もると、外数扱いとなった人材育成コストが重荷になっていくんです。
そうなる弊害は、人を育てる側のミドルマネジメント、そして育てられる側の若手メンバーに降りかかります。
ミドルマネジメント:残業祭り
ミドルマネジメント層は2つの選択肢があります。
- 人材育成など無視。雑務だけ若手に振り、大事な仕事は全部自分が巻き取る
- 若手の育成に時間を割く。なるべく権限委譲し、少しずつ育てていく
1にしろ2にしろ、行き着く先は残業祭りです。
マネジメント=管理職としては、つべこべ言わず2を選んでほしいところ。
しかしぼくの経験上、多くの人が1を選んでしまいます。
若手メンバー:育たず自信を失う
すると若手メンバーは、「人材育成など無視」と決め込んだミドルマネジメントの下でひたすら雑務をこなすことになります。
来る日も来る日も議事録を書き、PMOワークとしてのお尻叩きに奔走し、単純なデータの集計や簡単なスライドを量産する……
もちろん、こういった「作業」を効率的にこなす経験は、仕事の基本所作を身につけるべき若手時代には必要なものではあります。
しかし長期プロジェクトでいつまでもそんな仕事ばかり振られ、「大事なところは俺がやるから黙ってろ」と任されない状態が続くとどうでしょう。
「任されない=実力不足=自分はダメ」という負のループに陥り、疲弊し、自信を失ってしまうかもしれません。
そして「人材の自転車操業」へ
すると、トップマネジメントはいいものの、現場にいるミドルマネジメントと若手メンバーがすり減っていきます。
そしてゆくゆくは「このチームにいたくない」というムードが蔓延し、離脱者が続々と出始めます。
すると新たにメンバーを社内外から採用せねばならず、採用工数と学習工数が追加でかかり続けることになります。
要するに、火を吹きながらの自転車操業に陥る、ということです。
人材育成工数を積むための、提案時の「言い方」アイデア
だから人材育成の工数を提案時に積むべきだ!
と言うのは簡単ではあるものの、実際クライアントに提案する際にどのように説明すればよいのか、という課題にぶち当たります。
そこで、いくつか説明パターンを考えてみました。ぼく自信、次回提案から使ってみようと思います。
小規模プロジェクトに分割し、プロマネ工数を乗せる
大規模プロジェクトも、細かく見れば小規模プロジェクトの集合体。
漫画「キングダム」で出てきた「伍」のように、小規模プロジェクトに分割し、人材育成を司るPMロールの工数をもらいましょう。
そしてPMロールの工数は「各種コミュニケーション資料」「横断課題検討」などのために割くんですよ、と説明するのです。
とはいえ、この戦法で工数を取ったとしても、「各種コミュニケーション」の期待値を適度にコントロールしないと、罠にハマります。
過度に期待したクライアントが、社内調整を含めた細々としたコミュニケーションまで全部押しつけてきてしまい、結局人事育成の工数が取れなくなってしまうんです。
ここは過去記事「常に期待を超える成果を出し続ける方法:期待値コントロール」に書いた通り、期待させずに1ミリだけ超える、という立ち回りをしないといけないところです。
「自己改善するプロフェッショナル集団」と位置づける
コンサルにしろSIerにしろ、クライアントからすると「成果物を作るための外部工数=金で買えるリソースプール」に見えるでしょう。
だから成果物に工数を紐付けることを求めてくるんです。
そこで、その認識を壊しにかかります。「俺らはただのリソースプールではない。自己改善するプロフェッショナル集団なんだ」というスタンスで、「だからこそ成果物あたりにかかる工数が大きいんだ」、と言い切ってしまうんです。
ただし、クライアントがコンサルに求めるのは「過去の類似事例に基づくクイックさ」であるがゆえ、この戦法がどこまで通用するかは不明です。
ジャストアイデア。
まとめ:人材育成工数を提案に含めよう
とはいえ、大規模プロジェクトとなると人材育成工数をちゃんと積まないと組織が維持しにくくなるのは事実。
本記事で挙げたアイデア以外にも、きっとクライアントへの説明ロジックはあるはず。
もしこの記事を読んで「私はこうやってるよ」と思われた方がいたなら、ぜひコメントにてお知らせいただければ幸いです。
以上「大規模プロジェクトの提案には人材育成の工数を含めるべきだと思う」でした。
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