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「聞く耳を持つ上司」「実情の把握に努める上司」の重要性

人と組織

ひょんなことから週に1回、パートタイムで自分の仕事をスーパーバイズする立場の人がやってくることとなった。

その人は、ぼくが担当している領域のスペシャリスト。SME的な立場で状況レビューをするから、という形だ。

それから数週間たったが、今とても幸せな気分である。

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これまでの上司たち陣営

理由は、これまでの上司陣が、ぼくの担当領域の特性や文脈を理解していなかったからだ。

 

1人はバリバリの営業。クライアントに案件を売り、売上を上げることを是とする。Aさんとする。

1人はバリバリの昭和。部長プレイで他のベンダーをコントロールする。Bさんとする。

1人はバリバリの学者。ロジック一本、正論で押し切るタイプ。Cさんとする。

 

Aさん「お前のミッションは提案。売上をあげることに注力せよ」

Bさん「お前のミッションは既存ベンダーの駆逐。一刻も早く追い出せ」

Cさん「お前のミッションは伝道師。正しい方向にクライアントを導け」

 

三者三様、好きなことを言うのである。もちろん、それぞれの立場に立つと、それぞれ正しいことを言っている。

しかしぼくの見ている領域は、彼らの言うことを素直に聞くと崩壊する世界なのだ。

ぼくの担当領域は「三すくみ牧場」である

ぼくが主に担当している領域=主にやりとりしている部署は、クライアントの中では非常に特殊だ。

まず、クライアントの社員がきわめて少ない。売上4桁億円の企業を支える1部署としては異例と言える少人数。しかし少数精鋭というわけではない。担当領域に関するクライアント社員のケイパビリティは、残念ながらきわめて低い。

そんな中、頭数とケイパビリティ両面で、複数のベンダが精鋭を集めて当該部署のサポートに入っている。クライアント社員の前で、ベンダが会議における意思決定者として振る舞う……ということすら日常茶飯事である。

とはいえ各ベンダには各ベンダの思惑がある。当然、自分の陣地を広げたいと思っている。ベンダ同士は常に「食うか食われるか」と互いを牽制しつつ、一方で互いの実力を認めあい、信頼しあっている。

とどのつまり、ぼくの担当領域は、クライアント社員が複数ベンダを競争させつつ飼いならしている「三すくみ牧場」なのである。

和をもって尊しとなす。微妙なバランスの上に成り立つ世界だ。

羊のふりをしたオオカミは排除される

そこに、無理な提案、強引な駆逐、非現実的な正論などをぶっこんでくる「オオカミ」が紛れ込んできたらどうなるだろうか。

それも、これまで他の羊と仲良くやっていた羊が突然皮を脱ぎ捨て、オオカミに変身するのである。

きっと牧場主であるクライアントは驚きおののき、全力でオオカミをまっさきに排除するだろう。

 

当然、ぼく自身も陣地を広げたいという思いはある。

しかし無理に陣地を広げて牧場自体から退場を食らうのでは元も子もない。

そんな状況を3人の上司に伝えてはいたものの、なかなか理解されない。

「お前の領域はお前に任せている。自由にすれば良い」

「だがいいか。俺の言うことは聞け」

の一点張りなのだ。

要するに右から左へ抜けており、聞く耳を持っていない。

新SVは、まず実情=現場を見た

そんな中、なかなか「言うことを聞かない」ぼくに喝を入れるべくやってきたのが、冒頭に登場した新SV、というわけだ。

しかし彼は3人の上司とは違い、自分の目で実情を正確に把握するように動いた。

定例会に顔を出し、普段の動き方や、ぼくとクライアントの関係性、部署の特色、意思決定のメカニズム、各人の役割分担など、つぶさに観察した。

そのうえで、「これ以外でNAEくんの担当している部分を全部教えて」「そのうえで今後どう動くべきか考えを聞きたい」とヒアリングをかけてきた。

 

そのうえでの彼の判断は、こうだ。

「これは上の言うことを聞くのは無理だ」

彼はもちろん、3人の上司の意向を知っている。日々話もしている。

と同時に、彼はぼくの担当領域についてよく知っている、その道のプロでもある。

 

そのうえで、

「そもそも現場レベルで陣地を広げにかかるのは難易度が高すぎる状況だ」

「それに正論かまして無駄な仕事を増やすべきタイミングでもない」

「つまり、3人の上司の言うことを聞くべき状況ではない。無理」

というのが、彼の判断だ。

 

肩の力が抜けた。これまでのストレスも吹っ飛んだ。

自分の判断は正しかったのだ。

 

新SVの彼はその後、

「まあ俺は早晩いなくなるよ。既存ベンダ駆逐っていう裏ミッションが実現できっこないのがわかったから。」

「でもいなくなる前に、君が動きやすくなるよう、最大限のインプットしていくからよろしく。」

と言って笑った。

まとめ:自分も部下の理解者でいようと思う

「無理難題」による修羅場で成長を促す上司はもちろん貴重な存在だ。

しかし、実情を理解してくれる上司の存在は、それ以上に重要である。

心理的安全性が確保されていること、精神的に安定していること、そして自分に自信をもっていられることの3点は、仕事でパフォームする前提条件。そして上司が理解者でいることは、それら条件を満たす重大要因だからだ。

 

かたやぼく自身も、複数のチームを管理する立場である。

20人近いメンバーたちが、ぼくの1つ1つの言動を見ており、日々影響を受けている。

 

はたしてぼくは、彼のように現場の理解者でいられただろうか。

安心してのびのびと仕事に打ち込める環境を作ってあげられているだろうか。

今一度、自分に問いかけてみようと思う。

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