部下が仕事で失敗したとき、あなたは何に着目しますか?
部下という「人」に着目すると、どうしても「おまえが悪い」「おまえは駄目だ」と人の非難に走ってしまいます。しかしこれでは部下が潰れてしまうでしょう。
そのため可能な限り、失敗したという「罪(事実)」に着目し、「どうしてこうなったのか」「リカバリはどうするか」と建設的な議論を行うべきです。いわば「罪を憎んで人を憎まず」です。
もちろん、この世に完璧な人間はいないので、どんなに気をつけていても「人を憎む」をゼロにするのは無理です。
しかし、努力によってゼロに近づけることはできるはず。
では、どうすればいいのでしょうか?
今回は、ぼくが個人的にやっている「罪を憎んで人を憎まず」を保つコツ=個人的な心得を共有してみます。
この記事が部下への人格攻撃を減らす一助になればと思います。
1. 部下の「残りHP」は資産と心得る
部下にも「残りHP」があります。
仕事に打ち込めば打ち込むほどHPは減っていき、仕事が終わる時間ともなればHPはかなり減っているはず。
部下のHPは仕事を進める原動力=ガソリン残量ともいえます。
にもかかわらず、本人をターゲットに怒鳴る、罵る、人格攻撃をすると、大切なHPはゴリゴリ減っていくんです。
くわえて、詰めすぎると残りHPだけでなく、心にダメージを負って最大HPすら減ってしまうでしょう。ぼくも過労で倒れたとき、最大HPの減りを体感しました。これでは回復に長い時間がかかりますし、最悪取り返しがつきません。
だからこそ、部下の残りHPを限りある資産と捉え、なるべくすり減らさない方法で叱ることを心がけること。
そうするとHPをすり減りやすい「人を憎む」を敬遠し、「罪を憎む」にフォーカスしやすくなっていきます。
2. 「人を憎む」は自分の残機を減らすと心得る
「人を憎む」でダメージを食らうのは部下のHPだけではありません。自分自身の残機すら減らします。
人は自分を攻撃してくる人間を敵とみなすもの。敵のことは信頼しません。そして信頼しない人の言うことは聞きたくない、と思うのが事前自然す。
しかし、部下が言うことを聞かないとなるとどうでしょう。困るのは上司であるあなた自身ではありませんか。
チームメンバーのスキルを駆使してチーム全体のパフォーマンスを最大化するのが上司の責務なんです。
したがって、言うことを聞かない部下が増えるほど、上司は仕事をこなせなくなるはず。
つまり、言うことを聞いてくれる部下は上司にとって残機と同等。「人を憎む」にがけて部下を潰しにかかるのは、自分自身を潰しにかかっているのと同じ、というわけです。
3. 部下は会社からの借りものと心得る
部下を自分の残機と認識するだけでは足りません。部下は人材。会社の資産です。なので大事に扱わなければなりません。
「人を憎む」スタンスで部下を乱暴に扱うのは、オフィスの複合機にローキックをかますのと同じ。
ネチネチ責めて潰すのは、社屋の窓ガラスにイスを投げつけてぶち割るのと変わりません。
要は会社の資産を毀損する行いです。
そもそも上司というものは、自分の役務を果たすため、部下という人材を会社から拝借しているだけなんです。借り物をぞんざいに扱ってはいけないですよね。
だから「人を憎む」で部下を壊すのは、会社の資産そのものに害をなすテロ行為とも言えるのです。
「人を憎む」に走らざるをえない場合もある
しかし、これら心得をもってしても「人を憎む」に走らざるをえないこともあります。
例をあげてみましょう。
マインドが腐っている
「罪を憎む」スタンスで失敗の原因や改善の行動をアドバイスしても、それを全く聞き入れるつもりがない。成長するつもりがない。
心を込めてアドバイスしているのにも関わらず、 メモを取るふりでノートにミミズを書いてるだけ。
このようにビジネスマインドが腐っている人の場合は救いようがありません。
指揮系統を守っていない
指揮系統を無視し、業務命令を守らない場合も同様です。
会社に雇用されている以上、雇用契約に定められているはずの「業務上の指示に従う」を守らないのは、雇用契約違反となります。
にもかかわらず部下が業務上の指示を聞くつもりがない場合、 残念ながら「 人を憎む」の一環で人事処分を検討せざるを得ません
明らかに悪意がある
故意ではない失敗であれば改善の余地は多分にあります。
しかし、組織やあなたを貶めることを目的に、悪意をもってわざと失敗しているなら大問題。
組織を内部から腐らせる可能性があるので、 ビジネス判断として「人を憎む」に踏み込まざるを得ないでしょう。
まとめ: 努力目標として「罪を憎んで人を憎まず」を設定してみては
そもそも「罪を憎んで人を憎まず」という言葉は、性善説に基づいているとぼくは考えています。
しかし世の中、そんなにできた人間ばかりではないので、 性悪説ベースで大なたを振るわれざるを得ないこともあるでしょう。
そんな現実をさしおいて「 常に罪を憎みなさい」というのも酷なもの。
「 罪を憎んで人を憎まず」は、あくまで努力目標として意識しながら、 そこに近づくふるまいのコツを一つ一つ身につけていくのが現実解なのかな……と思います。
以上、「仕事で失敗した部下を前に「罪を憎んで人を憎まず」を貫く3つの心得」というお話でした。
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