コンサルの仕事は提案から始まります。
競合他社とのコンペティションに勝つことが、仕事の前提条件です。
どうすれば勝てるのでしょうか?何かコツはあるのでしょうか?
今回は、コンペに勝利してきた様々な提案書を見てきてわかった、共通する目次構成を紹介してみます。
勝率の高い提案書の目次構成
1 ご挨拶
「今回はご提案の機会を賜り、誠にありがとうございます」から始まる、お偉いさんの挨拶です。
初めてお付き合いさせていただくクライアントの場合は必ずつけますが、継続案件の場合、省略することも多いです。
2 本取組に関する弊社認識
「弊社はきちんと御社の状況を理解しております」と伝えるために入れるセクションです。
RFP(Request For Proposal: 提案依頼書)に書かれた提案依頼背景をインプットに、
- クライアント内での活動の位置付け
- 活動そのものが孕む性質
などを書いていきます。
例えば「本活動は御社ビジネスのグローバル展開の礎をなす、全社的な業務・システム改革と認識しております」などです。
RFPのコピペや焼き直しになる場合もありますが、入れておく方がいいでしょう。
逆に入っていないと、「こいつらちゃんと背景理解してるのか?」と思われてしまうリスクがあるからです。
3 難しさ、陥りがちな罠、成功の要諦
「この活動の性質からして、こういう部分が難易度が高いと想定されます」
「このタイプの活動は、よく分かっていない素人がやるとこんな落とし穴にはまって失敗しがちなんです」
「難しさを解決したり、落とし穴を避ける上で、こんなふうにうまくやることが成功の要因なんですよ」
……と、アピールするセクションです。
クライアントにとって初めての試みでも、コンサルにとっては他社で経験済みの活動だったりするもの。
なのでここで思い切り、我々はわかってるんですよアピールをします。
ただしこれは自慢でもなんでもなく、コンサルに提案依頼をする=過去の知見を活かした「うまいやり方」をクライアントは期待しているのです。
そのため、このセクションがないと逆に「このコンサル期待値未満だな」と思われてしまいます。
4 弊社提供価値
「成功の要因を我々はきちんと提供できるんです!」とアピールするセクションてす。
「グローバル展開には英語が必須」「でも弊社、全員純ジャパです」では説得力に欠けますよね。
クライアントは活動を成功に導けるパートナーを求めています。
物事を知っているけど成功に導けない、評論家には発注したくないわけです。
なのでこのセクションで、自分たちはパートナーたるケイパビリティを備えていると宣言します。
他社との差別化要因もここでバーンと出します。
5 ご提案内容
提案書の本編です。
求められている提案内容=最終アウトプットに即し、
- アウトプットまで至る道筋
- 自社ならではの、アプローチや体制の工夫点(いかにうまく早く安くするか)
- 主な論点、及びそれらの解決方針
- 取り組みの目的と足元の活動の整合性の取り方
など、クライアントが知りたいであろうことを書いていきます。
もちろん、提案依頼書に書かれている「盛り込んでほしいポイント」は全て網羅します。
その上で「弊社提供価値」がどこに現れているかも分かるようにしておきます。
これにより、
- こいつらは分かってる
- こいつらはできる
- こいつらは具体的なやり方まで見通してる
と思ってもらうのです。
システム開発系のプロジェクトの場合は、このセクションで
- 想定するソリューション
- テクノロジースタック
- インフラの構成と想定規模
など、コスト見積もりの前提情報を書いておきます。
6 スケジュールと推進体制
前のセクションで書いたアプローチについて、何を、いつ、どういう役割分担で行うか具体化します。
- プロジェクト完了までのマイルストーンとタスクチャート
- クライアントと自社双方のプロジェクト推進体制
- コミュニケーションプラン(会議体など)
コンサルのような人月売りのビジネスの場合、自社側の体制≒頭数や工数が報酬の見積前提になります。
必要であれば、クライアント側の担当者に求める想定参画工数なども見積もっておきます。
こうすることで、提案が通ったはいいもののクライアント側の体制が整わないリスクを小さくできます。
ここ、ちゃんと考えて書かないと炎上します。
7 報酬見積もり、その他前提事項
提案内容に値札をつけるセクションです。
「全部まるごといくらです」とする場合もあれば、提案内容をいくつかの領域に分割して領域別に金額を出す場合もあります。
クライアントの予算にも限度があるので、優先度の高い領域だけ発注しようと判断される場合があるからです。
加えて
「スコープ変更など、本提案における前提事項に変更があった場合は、別途相談の上、追加費用を請求させて頂く場合があります」
「弊社メンバーの作業スペースは、御社オフィス内にご準備いただくものとします」
「想定外の出張や長期滞在などがあった場合、実費を請求させていただきます」
など、自社を守るための前提条件もここに書いておきます。
逆に前提が書いてないと、クライアントにゴリ押しされて現場が死にます。
支払条件(月末締め翌月払いなど)や消費税の扱いもここです。
8 参考資料
「弊社提供価値」や「提案内容」で謳ったことのエビデンスです。
- 同じ業界の過去のプロジェクト実績
- 参画するエキスパートの紹介
- グローバル拠点のあらまし
- リファレンスモデルやアセットの紹介
- MAGIC quadrant など自社の外部評価
- ソリューションベンダーとのパートナーシップ
- R & D 拠点の紹介
などなど、信頼性を高めるのに必要な情報をのせていきます。
構成だけマネても勝てない
ここまでお読みいただいて、気づいた方もいると思います。
構成だけを真似ても、コンペには勝てません。
提案書の構成は、あくまでクライアントに対して実現可能な提案内容をより魅力的かつ効果的に伝えるためのもの。
提案内容そのものがダメダメなら箸にも棒にもかかりません。
言っていることはピカピカでも、実際にデリバリーできないハリボテ提案は、かなりの確率で見抜かれます。
あくまで「良い提案コンテンツ」と「実現可能性」による裏打ちがあってこその、「勝率の高い提案書の構成」なのです。
その意味では、今回ご紹介した目次構成は提案内容に過不足がないかの答えあわせに使えるかもしれません。
まとめ:勝ちパターンを見つけよう
というわけで、「勝率の高い提案書の目次構成」についてお話ししました。
もしかするとこれは、コンサル企業だからこそ勝率の高い構成なのかもしれません。
そのため他の企業には、その企業なりの勝ちパターンがあるものと思います。
クライアントに提供できる価値はなにか?それは実現可能か?どの範囲までならできるか?
是非、自社なりの勝ちパターンを見つけてみてください。
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